ドニ・モルテ
ドニ・モルテ
一代でトップ生産者に上り詰めたジュヴレの象徴的スタードメーヌ
モルテ家のワイン造りの歴史は1956年にシャルル・モルテが1haの畑を購入し、ネゴシアンにブドウを売るところから始まった。シャルルの息子ドニと妻のローレンスは1978年からワイナリーで働き始め、1980年代中頃になるとドニはアンリ・ジャイエと出会い、親密な間柄となる。1991年にシャルルが引退すると、ドニは4.5haの畑から自分のドメーヌを立ち上げる準備を始めた。同じ頃、ドニはラルー・ビーズ・ルロワと出会う。1997年のWS誌のインタビューで彼はルロワのセラーで1991年ヴィンテージを24キュヴェ試飲した時のことを語り、その体験が上質なワインを造るきっかけになったと話している。ルロワのワインはドニにブルゴーニュで何ができるのか、その可能性に気づかせたのだ。スタート当初から官能的なテクスチャーを持つドニのワインは、愛好家からも造り手たちからも称賛された。畑も4ha拡張し、ジュヴレの1er Lavaux Saint Jacques や村名区画En Motrot、Au Vellé、En Champsm、そしてマルサネのLes Longeroiesなどを取得。その後1999年にはChambertinを購入。最終的に11.2haの規模となった。
父の遺志を継承しつつ さらにエレガンスを求める
ドニ時代のドメーヌのワインは、いかにもジュヴレ・シャンベルタンらしい、強い抽出と凝縮感をもつワインであった。しかし、息子のアルノーは、抽出が強過ぎるのではないかと父の造るワインに疑問を抱き、2000年にそれを訴えて以降、ピジャージュの頻度を減らすようになったという。
醸造法は、原則として完全除梗(2009年のような暑い年は半分くらい全房を含める)のうえ、低温マセレーション。発酵容器はコンクリートタンクを使う。
1日1回のルモンタージュと2、3回のピジャージュ。新樽率も父の時代と変わり、以前はほぼ100%新樽熟成だったが、現在は村名ジュヴレ・シャンベルタンで60〜70%まで下げている。熟成期間は18ヶ月。
アルノーの時代になり、ワインは力強さと同時にフィネスやエレガンスを備えたものとなり、口当たりはまろやかに、喉越しはスムーズに変化しているのは確か。
また、アルノーはマルサネやフィサンなどコート・ド・ニュイ北部のアペラシオンに関心を寄せ、この地域の畑を増やしており、それらのワインの品質がすこぶる高い。また、「アルノー・モルテ」は自らの名義でリリースするラインアップで、2016年より借地契約により加わった4haの畑のブドウから造られる。ラベルもドニ・モルテの物と同じデザインで、もちろん”ドメーヌ物”である事も含め、名のテキストが違うだけ。アルノーによるケアを受け、この新しい区画もいよいよ本領を発揮する。