ジュヴレ・シャンベルタン/Gevrey Chambertin

ジュブレ・シャンベルタン-Wine Library

Gevrey Chambertin 

ブルゴーニュの「王」たる所以と、剛健なテロワール

フランス、ブルゴーニュ地方の中心、コート・ド・ニュイ地区に位置するジュヴレ・シャンベルタンは、世界中のピノ・ノワール愛好家から畏敬の念をもって語られる、特別なアペラシオンです。「ブルゴーニュの王」と称されるこの村は、その偉大な歴史、独自のテロワール、そして何よりもそこで生まれるワインの荘厳さによって、ブルゴーニュの頂点に君臨し続けています。

ジュヴレ・シャンベルタンの歴史は古く、その名は中世の修道院や貴族の文書に頻繁に登場します。この土地のワイン造りの礎を築いたのは、ベネディクト会の修道士たちでした。彼らは、畑の微細な地質や日照条件の違いを見抜き、現在に繋がる複雑なクリマ(区画)の概念を確立しました。ジュヴレ・シャンベルタンが「王」と呼ばれる最大の理由は、そこで生み出されるワインの「力強さ(Puissance)」と「長命性(Longévité)」にあります。隣接する村のワインがしばしば「女性的」と表現されるのに対し、ジュヴレのピノ・ノワールは、厚みのあるタンニンと凝縮感、そして骨格のしっかりとしたストラクチャーを持ち、熟成によって驚くほどの複雑さを獲得します。この独特のキャラクターは、村のテロワールに深く根ざしています。

ジュヴレ・シャンベルタンの畑は、ジュラ紀に形成された石灰岩質の土壌が主体ですが、特に斜面の上部から中央部にかけては、小石が多く、水はけに優れています。さらに、この地域の土壌には、酸化鉄を多く含む赤い粘土層が混ざっており、これがワインに特有の深みのある色合いと、力強いミネラル感をもたらす要因とされています。この鉄分の存在は、ジュヴレのワインが持つ「剛健さ」の秘密の一つであり、長期熟成に耐えうる強靭な骨格を形成します。また、村はコート・ド・ニュイの北部に位置し、寒暖差が比較的大きい気候下にあります。この適度な冷涼さが、ピノ・ノワールが理想的な酸を保ちつつ、じっくりとフェノール(色素やタンニン)を成熟させることを可能にし、ワインにフレッシュさと深みの両方を与えています。

 9つのグラン・クリュと至高のプルミエ・クリュがもたらす類稀なる多様性と頂点

ジュヴレ・シャンベルタンの最も特筆すべき点は、ブルゴーニュ地方で最も多い9つものグラン・クリュ(特級畑)を擁していることです。この9つの畑は、それぞれがわずか数百メートルの範囲で隣接していながら、驚くほど多様な個性を持っています。

中心となるのは、間違いなく「シャンベルタン(Chambertin)」でしょう。シャンベルタンはナポレオンが愛したことでも知られており、凝縮感と圧倒的なフィネスを兼ね備え、真の「王」としての風格を持ちます。力強さの中にも洗練された複雑性があり、そのポテンシャルは数十年の熟成を可能にします。

これらに加え、他の8つの特級畑(マゾワイエール・シャンベルタン、シャルム・シャンベルタン、ラトリシエール・シャンベルタン、マジ・シャンベルタン、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ、シャペル・シャンベルタン、リュショット・シャンベルタン)は、それぞれ独自のアイデンティティを持っています。たとえば、マゾワイエールやシャルムは比較的ふくよかで芳醇な若いうちから楽しめる傾向があり、ラトリシエールはより引き締まったミネラル感と硬質な骨格を持つ、といった具合です。この9つのパッチワークのような畑の集合体が、ジュヴレ・シャンベルタンの奥深さを形成しています。

ジュヴレ・シャンベルタンの魅力は、特級畑だけに留まりません。村全体で30を超えるプルミエ・クリュ(一級畑)と、広範なヴィラージュ(村名)アペラシオンも、この地域の高水準な品質を支えています。プルミエ・クリュの中で最も有名なのは、特級畑に匹敵すると言われる「クロ・サン・ジャック(Clos Saint-Jacques)」です。この畑は、ジュヴレ・シャンベルタン村のワインの特性である「力強さ」と「厳格さ」を特に強く持ち、その価格も特級畑に迫ることが珍しくありません。

一方、村名格のジュヴレ・シャンベルタンも、他の村のヴィラージュワインと比較して明らかに肉付きが良く、タンニンがしっかりとしています。特に、特級畑の真下や、斜面の中腹に近い優良な区画から生まれる村名ワインは、若いうちからジュヴレらしい凝縮感を堪能でき、ブルゴーニュの真髄を味わうための最高のコストパフォーマンスを提供しています。これらのワインは、テロワール由来の力強さと、ピノ・ノワールの持つ繊細な果実味が見事に融合しており、偉大なグラン・クリュのエッセンスを垣間見せてくれます。

 熟成を経て発揮されるジュヴレ・シャンベルタンのテロワール

ジュヴレ・シャンベルタンのワインは、若い時にはカシスやチェリーなどの黒系果実のアロマと共に、土やスパイス、そして時として動物的なニュアンスが混ざり合い、その力強さから少し閉じた印象を与えることがあります。しかし、数年、あるいは十数年という時間を経て熟成すると、その真価が発揮されます。熟成により、タンニンは滑らかに溶け込み、果実味はトリュフや下草(腐葉土)、キノコといった複雑な第三アロマへと変化します。口当たりはシルキーになり、力強かった骨格はエレガントなフィネスへと昇華します。この変貌こそが、ワイン愛好家がジュヴレ・シャンベルタンに投資し、長期間セラーで寝かせる理由です。

「王」としての風格、鉄分を多く含む土壌がもたらす強靭な骨格、そして9つの特級畑が示す多様性。ジュヴレ・シャンベルタンは、ただのワイン産地ではなく、ピノ・ノワールという品種の可能性を極限まで引き出した、人類と自然の芸術作品と言えるでしょう。この荘厳なワインを体験することは、ブルゴーニュの歴史とテロワールの奥深さを理解することに他なりません。

ジュヴレ・シャンベルタンの代表的な生産者

アルマン・ルソー/Armand Rousseau

アルマン・ルソーはまさにジュヴレ・シャンベルタンの王者である。ルソーのワインはシルクのように滑らかで重さを感じさせない繊細さを極めた逸品になる。ロバート・パーカーは、「借金地獄に陥るまで、アルマン・ルソーを買い続ける」という最大級の賛辞を送っている。その他にも、フランスでもっとも権威あるワインの評価本「メイユール・ヴァン・ド・フランス」では、最高の三ツ星評価をかく遠くしており、世界中で求められる不動の最高位の地位を確立している。

クロード・デュガ/Claude Dugat

ドニ・モルテ/Denis Mortet


フーリエ/Fourrier

シャルロパン・パリゾ/Charlopin Parizot