シャンベルタン/Chambertin

Chambertin
ジュブレ・シャンベルタンの魂を映す威厳あるテロワール
シャンベルタン(Chambertin)は、ブルゴーニュ地方コート・ド・ニュイ地区、ジュヴレ・シャンベルタン村に位置する、世界で最も崇拝される赤ワインの特級畑(グラン・クリュ)の一つであり、「ブルゴーニュの王」としてその名を轟かせています。この畑から生まれるピノ・ノワールは、圧倒的な力強さ、威厳に満ちた骨格、そして数十年にも及ぶ長期熟成のポテンシャルを兼ね備えており、その卓越した品質は古くからフランス王室やナポレオン皇帝といった歴史上の偉人たちに愛されてきました。
「シャンベルタン」という名前は、元々この畑を所有していた農夫(Champ de Bertin=ベルタンの畑)に由来しており、13世紀頃にはシトー派修道院の管轄下にありました。この偉大な特級畑は、ジュヴレ・シャンベルタン村の9つのグラン・クリュの中で最も特別な地位を占めています。畑は標高240メートルから280メートルの東向きの緩やかな斜面に位置し、理想的な日照条件と水はけの良さを享受しています。

シャンベルタンの独特なテロワールと土壌構成
シャンベルタンのワインが持つ「男性的な力強さ」と表現される威厳は、その複雑なテロワールに深く根差しています。土壌は主に粘土石灰質土壌ですが、表土は薄く、泥土や砂利質の堆積物が混ざり合っているのが特徴です。この痩せた土壌はブドウの樹に厳しい環境を与え、結果としてブドウの粒を小さく、果皮を厚く、そしてエキス分を凝縮させます。シャンベルタンはやや粘土質が多く、これがワインに強靭な骨格と、熟成しても衰えない深い色調をもたらす要因となっています。また、東向きの斜面は、朝から日中にかけ長い時間日光を浴びることを可能にし、ピノ・ノワールのポリフェノールの成熟を完全に促します。これにより、ワインには煮詰めたカシス、ダークチェリー、そして森の下草や鉄分を思わせる複雑なアロマが生まれ、単なる力強さだけでなく、深みと複雑性を兼ね備えた味わいとなります。
シャンベルタンの代表的な生産者
シャンベルタンの畑は複数の偉大な生産者によって所有されており、それぞれが畑の個性を最大限に引き出す哲学を持っています。
ドメーヌ・アルマン・ルソー/Domaine Armand Rousseau
シャンベルタンの最大の所有者の一人であり、そのワインはフィネスとパワーが同居する究極のエレガンスと評されます。
アルノーの時代になり、ワインは力強さと同時にフィネスやエレガンスを備えたものとなり、口当たりはまろやかに、喉越しはスムーズに変化している。
ドメーヌ・トラペ・ペール・エ・フィス/Domaine Trapet Père et Fils
ビオディナミ農法を導入し、畑の生命力を高めることで、複雑で力強い骨格を持つシャンベルタンを造り出します。
シャンベルタンの真価は、その長期熟成能力にあります。若いうちはタンニンが堅牢で閉じた印象がありますが、10年、20年という時を経て、ビロードのような滑らかさと、スパイスやなめし革、トリュフといった妖艶な熟成ブーケが広がり、まさに「ワインの王」としての威厳と気品を現します。この畑のワインは、単なるピノ・ノワールではなく、ジュヴレ・シャンベルタンのテロワール、歴史、そしてピノ・ノワールという品種の持つ可能性の全てを凝縮した、飲むべき芸術作品と言えるでしょう。


