Bordeaux/ボルドー

Bordeaux Wine

 フランス南西部に位置し、大西洋とそこに流れ込むジロンド川の支流に囲まれたボルドー地方。その名は「水のほとり(Au bord de l’eau)」という古語から付いたと言われています。ボルドーおよびガロンヌ川周辺の地域では、シャンパーニュやブルゴーニュに並ぶ、ワインの生産地があります。通常「ボルドーワイン」として知られるこれら高品質のワインは長期の熟成にも耐え、愛好家を魅了して止みません。赤ワインでは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、白ワインではソーヴィニヨン・ブラン、そしてソーテルヌが有名な貴腐ワインでは、ソーヴィニヨン・ブランに加えセミヨンが用いられます。

 ボルドーにはジロンド川が流れ、セーヌ川によって2つの岸に分けられるパリのようにその西側が左岸、東側が右岸と呼ばれます。左岸は主に砂利が堆積した低地にあるのに対し、右岸は砂、砂利、粘土、石灰が堆積した丘の上にあります。水はけがよく温かい土壌を好む黒葡萄カベルネ・ソーヴィニヨンは温かい砂利質土壌の左岸で、一定の水分を必要として冷たい土壌を好む同じく黒葡萄のメルローは保湿性の高い粘土石灰質土壌の右岸で栽培されています。
 これまでのボルドーの気候ではうまく成熟することが難しかった黒葡萄カベルネ・フランが地球温暖化の影響でよく熟するようになり、最近は両岸で重要な役割を果たしています。
左岸の代表的な産地としてメドック地区やグラーヴ地区がなどが、右岸にはサンテミリオン地区とポムロール地区などがあり、左岸には大資本による大規模なシャトーが多いのに対し、右岸は家族経営の小規模なシャトーが大部分です。

左岸の村

メドック

St. Estephe

サン・テステフはメドックの最北、ジロンド河の下流に位置するアペラシオン。シャトーの数こそ少ないものの、品質と評価が高くコストパフォーマンスに優れたシャトーが多いことも特徴です。またメドック格付けシャトーは5つのみですが、スーパーセカンドの筆頭として名高いシャトー・コス・デストゥルネルやシャトー・モンローズ、ハートのラベルが特徴的なシャトー・カロン・セギュールは、ワインラヴァーを魅了し続けています。ボルドー市内よりも気温が低く、大西洋の影響による涼しい気候がブドウに引き締まった酸を与えます。土壌は砂利質、粘土質、石灰質の3種類で構成されており、メドックでも右岸に共通する良質な粘土質土壌が多く、メルロの栽培にも適した土地。粘土質土壌は、ワインに独特の土っぽさやスパイシーさを与えてくれます。

Pauillac

ポイヤックはジロンド河左岸のメドック地区に位置しており、北のサン・テステフと南のサン・ジュリアンに挟まれた、総面積1,212haを誇るアペラシオン。ポイヤック村のブドウの他、シサック村、サン・ジュリアン村、サン・テステフ村、サン・ソヴール村の5つの村にまたがっています。メドック格付けの第1級シャトーが3つ、そして2級から5級までの15シャトーを有し、この村の総生産の約8割をこの18シャトーが占める、ボルドーを象徴する銘醸地です。

ポイヤックで栽培されているブドウは、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロが中心。特にカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が高く、全体の約7割の畑で栽培されています。水はけが悪く保湿性が高い粘土質土壌の場合、地中の温度が下がってしまい、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンを熟させる事が難しいのですが、ポイヤックの特徴である砂利質土壌は、ブドウの成長に非常に有利に働きます。

また、若いうちはしっかりとしたタンニンが特徴。熟成させることで、この上ない複雑な風味を生み出す、「赤ワイン品種の王者」と呼ばれる上質なカベルネ・ソーヴィニヨンを多く産出しています。

St. Julien 

サン・ジュリアンは、クラシックなボルドースタイルに魅せられるシャトー・タルボやレオヴィル3兄弟の格付けシャトーはじめ、シャトーとシャトーが隣合う比較的小さな村です。ポイヤックやサン・テステフ、マルゴーなどの主要産地の面積が1,100ha以上であるのに対して、サン・ジュリアンは910haのみ。しかし、裏を返せばそれだけ厳選されたテロワールを持っているということ。

事実として、サン・ジュリアンのメドック格付け11シャトー中、5シャトーが2級に位置付けられ、1級クラスの実力を持つスーパーセカンドも数多く存在します。サン・ジュリアンは、テロワールと生産者のレベルが、メドック随一の高さを誇ると言っても過言ではありません。

村はメドックの中央に位置。ジロンド河沿岸に向かってなだらかに傾斜した地形にあります。土壌は大きな石の混じる粘土質や石灰質の層をベースとした、水捌けの良い砂利質土壌で構成されます。また広々とした平地のため、いずれのシャトーも日当たり、風通しとも良好。そのため、凝縮感のある上質なカベルネ・ソーヴィニヨンが育ち、メドック地区の中でもクオリティの高いワインを造り上げることが出来るのです。

また、ヴィンテージに左右されにくい環境でもあり、こういった恵まれた条件が、抜群の安堵感を与えてくれるワインと言われる所以なのです。

Margaux

メドックの最も南、ジロンド河の上流に位置するアペラシオン、マルゴー。このアペラシオンは、マルゴー村、スーサン村、カントナック村、ラバルド村、アルザック村の5つの村にまたがります。面積はメドックの9%にあたる1,350ha。全79の生産者のうち、21シャトーが格付けという、ボルドーで最も多くの格付けシャトーを有するアペラシオンです。

マルゴーの特徴は、メドックの中でも温暖であること。さらに土壌の種類が他のアペラシオンよりも多いことがあげられます。土壌は、砂、粘土質、石灰質、砂利質の4種類があり、さらに砂利だけにおいてもシャトー・マルゴーの場合、白、灰、黄色、赤、黒といった豊富な色調があります。砂はアルザック村やスーザン村に多く見られ、粘土質はラバルド村、マルゴー村とカントナック村には砂利が多く、格付けシャトーのほとんどがこの2つの村に集中しています。

グラーヴ

Pessac-Leognan

ボルドーのアペラシオンと大きく異なるのは、赤ワインだけでなく白ワインが特に有名ということ。

土壌は非常に水はけのよい砂礫質を中心に粘土、砂、石灰岩、砂利の入り混じり非常に複雑。さらに石英が混じり黒ブドウ、白ブドウどちらにも対応できる多様な土地。サンテステフまで車で2時間また、海から近く南にあるためメドックよりも暖かい。

赤ワインはメドックのワインによく似ているが全く違う。軽くしなやかでエレガントで比較的若いヴィンテージでもとっつきやすく香りに富んでいる。

白ワインはロワールに続くソーヴィニヨン・ブランの銘醸地で、セミヨンと少量のミュスカデルが栽培されている。名産品の牡蠣に合う軽いドライな味わいのワインから20年以上の熟成に耐えうる、世界でも随一の高級ワインができる。

Sauternes

ソーテルヌ地区はフランスが世界に誇る世界三大貴腐ワイン産地の一つ。1855年に制定された格付けで、特別第一級にシャトー・ディケムが認定され、配下の一級にギローやリューセックなど11シャトー、2級には15のシャトーが属しています。場所はボルドー市の南東、ガロンヌ川左岸と支流のシロン川に挟まれた地域。二つの川の温度差が朝霧を生み、昼は日照で乾燥する稀な気候条件から、ボトリティス・シネレア菌が発生します。この菌により糖度の高い貴腐葡萄が育ち、1本の木がグラス一杯分に値するという、美しい黄金色を奏でた希少な貴腐ワインが生まれます。世界の甘口ファンを魅了し続けている名産地です。

右岸の村

Pomerol

ポムロルは、リブルネ地域に位置しドルドーニュ川の右岸に広がる地域です。ブドウ畑は800ha程と小さく、ポムロル村と南西のリブルネ村とラランド・ド・ポムロルの一部を含みます。800haはおおよそメドックの格付け1級シャトーの面積を合わせた程度なので、ボルドーの中では小さなエリアということがお分かりいただけるでしょう。

サン・テミリオンと違い、歴史的建造物などはほとんどなく、起伏の少ない平坦な台地にブドウ畑が広がっています。そのため観光地としては一般的に広く知られてはいませんが、コアなワインファンにとっては垂涎の銘醸地として知られています。

気候は他のボルドー地区と同じ海洋性気候に属しており、秋は長く穏やかで夏は暑く、雨は一年を通して均衡に降る傾向にあり湿度が高い特徴を持っています。また海が近いため、風が強いのも海洋性気候の特徴です。

ポムロルの土壌は、太古の地層とドルドーニュ川によって運ばれた堆積で形成されており鉄分を多く含んでいます。ポムロルの西側の土壌は砂質で、香り良く滑らかでソフトなワインが造られ、サン・テミリオンに近い東側は粘土質土壌で、ペトリュスなどタンニンが強く構造が大きいパワフルなワインが造られているのです。

St. Emilion

ボルドー右岸と呼ばれるエリアの中でもサン・テミリオンは非常に広大で、5000haの土地に約1000ものシャトーが密集しています。

A.O.C.サン・テミリオンはサン・テミリオンの町を中心とする九つの市町村に認められており、1999年にはリブルヌ市を除く8町村が世界で初めてワイン産地としてユネスコの世界遺産に登録されました。

ボルドーの気候は大西洋を流れる暖かなメキシコ湾流の影響により温暖な海洋性気候ですが、他のエリアに比べてサン・テミリオンは内陸に位置するため、昼夜の気温差はやや大きくなります。

また、土壌はサン・テミリオンもその衛生地区も概ね石灰岩を母岩にもつ粘土石灰質ですが、サン・テミリオンの丘の斜面や台地、ドルドーニュ川に近い平野部などで土壌は異なり、同じサン・テミリオン内でも複雑で変化に富んでいます。

サン・テミリオンは大きく二つの地域に分けられます。一つは「コート」と呼ばれるサン・テミリオンの町を囲む石灰岩系の丘陵地帯。一方は、ポムロルと隣接する北西部の「グラーヴ」で、言葉の通り石灰質と砂利・粘土質の土壌です。