ドメーヌ・コルディエ・ペール・エ・フィス / Domaine Cordier Pere & Fils

Domaine Cordier Pere & Fils

ドメーヌ・コルディエ・ペール・エ・フィス

1930年代にギュスターヴ・コルディエ氏によって創業された、マコネ地区の老舗ドメーヌです。その後、息子のロジェ・コルディエ氏がドメーヌを引き継ぎ、1989年からはロジェ氏の息子であるクリストフ・コルディエ氏が運営に携わるようになりました。クリストフ氏は、マコネのワインの品質向上に多大なる貢献を果たし、その功績は広く認められています。

彼の名声は高く、ブルゴーニュのワイン専門誌『ブルゴーニュ・オジュルデュイ』では、2005年に「ブルゴーニュNo.1のヴィニュロン」に選出されるほどです。この評価は、マコネ地区のワインが時に軽視されがちであった中で、その潜在能力を最大限に引き出したクリストフ氏の手腕がいかに優れているかを物語っています。さらに驚くべきは、ルフレーヴやコント・ラフォンといった、コート・ド・ボーヌのグラン・クリュを産するようなブルゴーニュ屈指の著名生産者でさえ、マコネ地区への進出を検討する際に、クリストフ氏の元に教えを請いに訪れるほど、彼の知識と技術がリスペクトされている点です。

クリストフ氏のワイン造りの哲学は、「ブドウの質の高さがグラン・ヴァンを生む原動力につながる」という信念に基づいています。そのため、ワイン造りの全プロセスの80%をブドウ栽培に注力すると言われるほど、畑仕事に重きを置いています。畑はリュット・レゾネ（減農薬農法）で管理され、剪定や摘芽、除葉、収穫といった全ての作業が手作業で厳密に行われます。収量を極限まで抑え、ブドウが最良の完熟状態に達するまで収穫を遅らせることで、凝縮感と複雑味に富んだブドウを育てています。また、土壌の活性化のために耕耘を行い、下草は自然に生やすなど、畑の生態系を尊重した栽培を実践しています。

醸造においては、自然酵母を用いてアルコール発酵を行い、マロラクティック発酵と熟成は澱引きせずに澱と共にじっくりと行われます。清澄はせず、軽くフィルターをかける程度に留めることで、ブドウ本来の風味とテロワールの個性を最大限に引き出すことを目指しています。近年では、「メゾン・クリストフ・コルディエ」という名義でネゴシアン業も手掛け、ドメーヌのワインと同等の品質を追求しています。これは、クリストフ氏がマコネ全域の優れたテロワールに対する深い理解と、それを表現する能力を持つことの証でもあります。

コルディエのワインの特徴

ドメーヌ・コルディエ・ペール・エ・フィスのワインは、その多くがシャルドネから造られる白ワインであり、マコネ地方、特にプイィ・フュイッセのテロワールを精緻に映し出しています。彼らのワインの最大の特長は、完熟したブドウ由来の凝縮感と芳醇な果実味にあります。収穫を遅らせることで、アプリコット、マンゴー、パイン、柑橘類といったトロピカルフルーツのアロマが豊かに広がり、飲む者にリッチでボリューミーな印象を与えます。

しかし、その味わいは単にパワフルなだけでなく、優れたバランス感覚も持ち合わせています。完熟した果実味に、しっかりとした酸とミネラルが骨格を与え、重厚感がありながらも繊細でエレガントな印象も併せ持ちます。新樽比率を抑えつつも、オーク樽での熟成によって、バニラやトースト、ナッツ、バター、蜂蜜といった複雑な風味が加わり、ワインにさらなる奥行きと気品を与えています。口に含むとスムーズでクリーミーなテクスチャーが感じられ、グリセリン分が豊富でオイリーさが増していくジューシーな味わいは、まさにマコネのシャルドネの真髄を表現しています。

特に、樹齢の高いブドウから造られる「ヴィエイユ・ヴィーニュ（古樹）」のキュヴェは、その凝縮感とミネラル感が際立っており、古木ならではの深みと余韻の長さは特筆に値します。プイィ・フュイッセの格付け見直しにより、新たにプルミエ・クリュが誕生した際も、クリストフ氏の畑が選ばれるなど、彼のワインが高い品質を誇ることが改めて証明されています。

総じて、ドメーヌ・コルディエ・ペール・エ・フィスのワインは、マコネ地方のシャルドネの可能性を最大限に引き出し、時にコート・ド・ボーヌのグラン・クリュに匹敵するとも評されるほどの品質を誇ります。熟成を重ねることで、さらに複雑味と深みを増し、素晴らしい進化を遂げるポテンシャルも秘めています。その圧倒的な存在感は、ブルゴーニュ白ワインの愛好家にとって、決して見逃すことのできない珠玉の逸品と言えるでしょう。