アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムール / Alice et Olivier de Moor
Alice et Olivier de Moor
アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムール
ワイナリーと造り手について
アリスとオリヴィエとの取引は、ラシーヌの前身であるル・テロワールの頃から始まり、1996ヴィンテージが初めて日本に紹介されました。彼らのスタイルは、ヴァン・ナチュールへと向かい完成度を高めていきます。2000年にはニューヨークのヴァン・ナチュールのインポーターを通じてクロード・クルトワと知り合い、交流を深めた二人は、2002年に醸造時の亜硫酸無添加、ノンフィルターでの瓶詰めを行いました。2002年はシャブリにおいて稀な良年であったこともあり、間違いなく彼らのスタイルを決定づけたヴィンテージとなりました。
二人はディジョン大学で醸造学を専攻していた時に知り合い、1994年にワイナリーを創設しました。オリヴィエはヴィニュロン(ブドウ栽培者)の家系ではありませんでしたが、休暇中に畑仕事をしたり、叔父と共にクルジ村でブドウを栽培したりしていたため、ブドウ栽培の経験は豊富でした。一方のアリスは祖父の代から農家を営むブドウ栽培の家系に生まれ、フランス、オーストリア、ポルトガルの大きなワイナリーで経験を積みました。
シャブリの3haの畑とサン・ブリの1haでスタートし、1995年からはブルゴーニュ・アリゴテとブルゴーニュ・シトリーのエリアにさらに2.5haの畑を広げました。徐々に除草剤などの使用を減らし、2005年よりビオロジック栽培へ転換、2008年には認証を取得しています。現在(2024年)は約10haの畑を管理しており、息子のロマンも数年彼らと共に働いています。ロマンは2020年にサン・ブリで自身のワイナリーを立ち上げた後も、ド・ムールで働き続けています。
オリヴィエの目指す「一見シンプルな」ワイン造りは彼らが大学で学んだ近代栽培・醸造学で行う多くのことをあえて行わないという選択で、そのために当初は多くの批判にもさらされてきたと言うが、彼らの造るワインはスタイルの変更以前からすでに各国のプロフェッショナル達を虜にしてきた。ワイン造り
のスタイルを問わず、ワインとはヴィニュロンの 1 年の仕事を感じさせる「物語を語るよう」なものであり、畑やセラーでの辛いことも楽しいことも、語ってくれるようなものであるとアリスもまた考えている。
畑と栽培について
畑でのすべての作業の目的は、完熟したブドウをセラーへと運ぶことです。これは当初から変わらず、2005年のビオロジック栽培への転換以降はさらにその考えを深め、硫黄や銅の農薬の他に植物の煎じ薬なども使用し、特に銅の使用を抑えるようにしています。2020年前後からはブドウの糖度の高さが顕著になり、ソーヴィニョン・ブランのキュヴェ・サン・ブリュイ(サン・ブリの畑)の生産を停止しました。ポテンシャルアルコール度数が15度を超えることも珍しくなくなり、かといって収穫時期を早めて醸造することも彼らの考えに合わないのでしょう。涼しいヴィンテージに生産されることを願うばかりです。
セラーと醸造について
クルジ村の小さな通りを挟んで、彼らのセラーの向かいにはなだらかな斜面があります。半地下のセラーは2007年と2020年に増築され、石造りの熟成室ではシュール・リーで静かにワインが熟成されます。
手摘みでの収穫後、ステンレスタンクか木製樽で醗酵が始まり、瓶詰めまで手を触れないことも稀ではありません。マロラクティック醗酵に亜硫酸添加、残糖が高い年にはフィルターをしてから瓶詰めされることもありますが、画一的に手が加えられることはなく、すべてアリスとオリヴィエの経験と感覚に従い醸造は進められます。ヴィンテージにより12〜16カ月熟成されますが、2009年から始めたネゴシアンのものはもう少し早くリリースされることもあります。
ネゴシアンのワインは、友人のワイン生産者のブドウを使用したり、彼らの収穫量が極端に少ない年にはビオロジック栽培をしているブドウ農家からブドウを供給してもらったりしています。気候変動が叫ばれるようになってからは、南の地方からの買いブドウもあります。逆に彼らのワイナリーで豊作な場合には、彼らがブドウの供給者になることもあるのです。
ネゴシアンのワインはル・ヴァンダンジュール・マスケ(Le Vendangeur Masqué)シリーズとしてリリースされ、年によってはシャブリの外からも購入されることもあります。自社ブドウ、自社での手摘みにこだわる造り手もいますが、飲み手としてはド・ムールのような生産者の造る、リースリングやブールブランなどにはどうしても興味がわいてしまうでしょう。彼らのブドウが十分に収穫できることが最善ではあるのですが。
目まぐるしい環境の変化に対し、アリスとオリヴィエは座して待つだけでなく、現代の環境が与えられる中でのワイン生産にも着手しています。2024年にリリースされた**Nuova Discripto(新たなる描写:ソーヴィニョン・ブラン、シャルドネ、アリゴテ・マセレーション)**と名付けられたこのワインには、彼らから以下のような説明が添えられていました。
「気候的、生物学的、そして人間的な変化は非常に速いスピードで起こっており、自分たちが当初から続けてきたやり方と同じようにワイン造りをすることはできない。偏見なく、完全に自由に、自分たちが気に入るワインを造り続けるために、醸造方法を変えるよう導かれている。」
アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムールの代表キュヴェ
2021 シャブリ 1er Cru モン・ド・ミリュー / アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムール
2020 ブルゴーニュ・アリゴテ プランタシオン 1902 / アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムール
2022 シャブリ リュムール・デュ・タン / アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムール
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