プレマチュア・オキシジェーション 通称プレモックス(PMO)とは

熟成ワインを脅かす熟成前酸化

 皆様はプレモックスという言葉を耳にしたことはありますか?私はこの言葉を聞くとネガティヴな感情を抱いてしまいます。奮発して買ったワインをレストランに持ち込んで、いざ開けてみるとプレモックスでした、なんてことが何度かあったからです。プレモックスはプレマチュア・オキシジェーション;Premature Oxidation(以下、PMO)の略称であり熟成前酸化と和訳されるワインの劣化のことであり、特に2000年前後のヴィンテージのブルゴーニュ・ブランによく見られる劣化です。PMO劣化の厄介なところは、現代でも原因が明確には判明していないところです。以下は確定ではないものの研究によって原因と予想される要因です。

 

 PMOのワインに見られる色調:茶褐色に近く輝きが失われている

①粗悪なコルクの使用

 2000年代前後にはニューワールドでもワイン産業は十分行われており、現在と違いスクリューキャップを導入していた生産者は少なかった。その結果、コルクの需要が供給を上回り、その結果品質の低いコルクが市場に出回りました。粗悪なコルクを使用したワインは当然栓が緩く酸化が急速に進んでしまいます。

②酸化防止剤使用の抑制

 当時のブルゴーニュでは自然派ブームが興っており、多くの白の作り手がSO2の添加を従来に比べ少なくしました。面白いことに従来より自然派の作りをしていたコシュ・デュリやルフレーヴ はPMOがほとんど見られないと言います。

③ワインの酸度の低下

 かつてのブルゴーニュのワイン造りは酸っぱさとの戦いでした。酸っぱすぎるワインを避けるためにブドウの糖度を限界まで上げて収穫していた畑も、温暖化の影響でブドウの酸度が全体的に低下傾向にあります。その中で例年通りの糖度になるまで収穫を待つとブドウの酸度は失われワインにも酸度が保持できなくなります。酸は酸化に強く、自ずと酸度の低いワインはPMOのリスクも高くなると予想されます。

④澱の過剰な排除

 澱が多いと味わいに雑味が出てしまうという考え方から徹底的に澱を取り除くこともPMOの要因と考えられています。澱には還元(酸化の反対の現象)的な役割があるためワインを酸化から防ぐと言われております。

⑤瓶詰めが早い

 意外にも酸化を防ぐためにワインをなるべく早く瓶詰めすることは、長期的にみるとかえって過剰な酸化を引き起こすと言われております。樽熟成の期間が長いワインは適度に酸素と触れ合っており、その分酸化に強くなるという考えです。

  これらの予想される要因の組み合わせによってPMOが引き起こされると考えられています。経験上、PMOは特定の生産者に著しく多く、クラシカルな造りのブルゴーニュワインにはあまり見られない傾向にあります。

 

 

河本榮辰