オーディンスタール/Weingut Odinstal

オディンスタール - Wine Library

Weingut Odinstal

一際標高の高い特別なテロワールを独自に表現するクラフトワイナリー

 ドイツ・ファルツ地方ワッヘンハイム(Wachenheim)に位置する小さなワイナリーで、標高約350メートルの高地に畑を構えています。この高さはファルツ地域では極めて珍しく、周囲よりも気温が低いため、ブドウの成熟が遅れ、ゆっくりとした成長サイクルを経て果実の複雑さを育みます。土壌は非常に多様で、火山性のバサルト、殻石灰(シェルライムストーン)、赤い砂岩、石灰粘土などが混じるモザイク構造を持っています。この土壌の変化が畑ごとの風味に明確な違いをもたらし、テロワールを際立たせる要因となっています。 

 現オーナーのトーマス・ヘンゼルと妻ウテ・フェルが、19世紀に開墾されたファルツのブドウ畑が遠くまで見渡せる高台にある土地を気に入り、1998年に購入。1992年以降ヘンゼル夫妻が購入するまでビオロジックで栽培されていました。2004年に栽培醸造責任者として、Dr. ダインハート 、Dr. ビュルクリン・ヴォルフ、ミュラー・カトワール、ヴィットマン醸造所といったファルツの著名生産者での研修を経たアンドレアス・シューマンが起用されます。

 ワイン造りの哲学は、「最小限の介入」と「ビオディナミ(生物動力農法)」への徹底したこだわりにあります。ぶどうは1990年代に有機栽培に切り替えられ、2000年代半ばにはビオディナミへの移行を果たしました。醸造では自然酵母発酵(ネイティブイースト)を用い、酸の調整や硫黄添加を極力控えることで、ぶどうと土壌、そして気候が持つ自然の個性をそのままボトルに閉じ込めることを目指しています。澱(おり)に長く触れさせる熟成、瓶熟成も含めて時間をかけ、香りの層の重なりとテクスチャーの豊かさを育てていることが感じられます。

 使用品種にはリースリング(Riesling)を中心に、ヴァイスブルグンダー(Weißburgunder)、オーセロワ(Auxerrois)、シルヴァーナー(Silvaner)、リースラーナー(Rieslaner)、ゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)などがあります。リースリングはOdinstalの中で最も「場所」を表現するぶどうとして取り扱われており、例えば「120 NN」などのヴィンテージでは、複数の区画のリースリングを組み合わせ、バサルトとシェルライムストーンと赤砂岩という異なる土壌の特徴を同時に味わえるスタイルを作り出しています。このワインは柑橘(ライムやグリーンアップル)、桃の果実味、そして土壌由来の鉱物感や岩のようなミネラルがクリアに立ち上がり、バランスの良い酸味とテクスチャーのコントラストがはっきりしています。

 ビオディナミで栽培することで、自然のリズムを理解し尊重すること、そして土地のもたらす個性を明確にワインに表現することを目指しています。

代表的なキュヴェ

2020 ヴァイスブルグンダー・バサルト

Odinstalのトップキュヴェ、「バザルト」シリーズのひとつ。バザルトは「玄武岩」のドイツ語。アフターにタンニンの緊張感を持たせるために、少量(5~10%ほど)全房のブドウも醗
酵に加えている。

2021 リースリング・ブントザントシュタイン

雑色砂岩(=ブントザントシュタイン)の土壌に植る樹齢40~45年のリースリングを使用。
ステンレスタンクで一部150日間マセレーション。ステンレスタンクで2ヵ月間以上熟成。

2022 シルヴァーナー・ナクト

所有する畑の中で森に近い、無剪定栽培を試している区画の収穫の植樹1988年のシルヴァーナーを使用。無剪定栽培の区画の収穫はアンフォラに全房を投入し、9ヵ月間マセレーション発酵・熟成(20%)。80%は500Lの古いトノーで醸造。