ル・クロ・デュ・チュ=ブッフ(ティエリー・ピュズラ) / Le Clos du Tue-Boeuf(Thierry Puzelat)
Le Clos du Tue-Boeuf(Thierry Puzelat)
ル・クロ・デュ・チュ=ブッフ:ロワールの自然派ワインの巨匠が織りなすテロワール
1996年にビオロジック栽培と、亜硫酸塩無添加醸造を開始し、今や堂々ヴァン・ナチュールの重鎮と畏敬される生産者。ドメーヌを運営するのはティエリーとジャン=マリのピュズラ兄弟の家系は15世紀からクロ・デュ・チュ=ブッフを所有しています。クロ・デュ・チュ=ブッフのワインは当時、王室でも楽しまれるほどの偉大なもので、16世紀には国王フランソワⅠ世と王女クロードが、特に入念に管理したという記録が残る、由緒ある畑であります。畑には施肥も数年に一度にとどめ、40hl/haを上限とする低収穫を徹底。彼のワインは、若いうちから気取らず近づきやすいが、熟成を経て次々に現れる味わいは、“驚異のピュズラ・ワールド”と呼ばれる独自の世界を持ちます。
2010年以降のヴィンテージではさらに心機一転し、しっかりとした格調と気品、みずみずしさと緊張感を、ドメーヌものだけでなくネゴシアン・ワインにさえ表現してきました。2014年にはそのネゴシアンを09年よりともに運営してきた、ピエール・オリヴィエ・ボノムに譲った頃からイタリア、スペイン、ジョージアの友人の造り手たちのワインを、フランスへと輸入することも始めました。2019年には兄のジャン=マリが引退し、ティエリーの二人の娘がワイナリーの運営に参画しています。
ル・クロ・デュ・チュ=ブッフ(Le Clos du Tue-Bœuf)は、フランス・ロワール地方、シェール・エ・ロワール県のプイィ・シュール・ロワールに位置する、家族経営のドメーヌです。15世紀から続く長い歴史を持つこのドメーヌは、古くからワイン造りを行ってきましたが、その名を世界に知らしめたのは、自然派ワインのパイオニアとして名高いティエリー・ピュズラとジャン=マリー・ピュズラ兄弟の功績に他なりません。彼らは、既成概念にとらわれない自由な発想と、テロワールへの深い敬意をもってワイン造りに取り組み、ロワール地方における自然派ワインの地位を確立しました。彼らのワインは、ブドウ本来のピュアな果実味と、畑の個性を最大限に引き出した複雑なミネラル感が特徴であり、一口飲めば、その土地の風景が目に浮かぶような、唯一無二の体験を与えてくれます。特に、ソーヴィニヨン・ブラン種から造られる白ワインは、その爽やかな酸と芳醇なアロマが絶妙に調和し、世界中のワイン愛好家を魅了しています。彼らのブドウ畑は、キンメリジャン石灰岩土壌を基盤とし、理想的な日照条件に恵まれています。この恵まれたテロワールは、ブドウに独特のミネラル感と複雑な風味をもたらし、ル・クロ・デュ・チュ=ブッフのワインに他にはない個性と深みを与えています。彼らは、畑での作業を非常に重視しており、剪定から収穫に至るまで、全て手作業で行っています。機械による介入を最小限に抑えることで、ブドウ樹一本一本の状態を細かく把握し、最適な時期に収穫することで、最高品質のブドウを確保しています。この徹底した品質管理が、彼らのワインの根底を支える重要な要素となっています。また、彼らは単一畑ごとにブドウを区別して栽培し、それぞれの区画のテロワールを最大限に表現することを目指しています。これは、同じ品種であっても、畑が異なればワインの個性も大きく異なるという彼らの信念に基づいています。このアプローチによって、ル・クロ・デュ・チュ=ブッフのワインは、単なるソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールといった品種の特徴だけでなく、そのワインが生まれた畑の物語を語りかけてくるような、深い魅力を持っています。
自然派ワインへの飽くなき探求と生産者の哲学
ル・クロ・デュ・チュ=ブッフのワイン造りにおける最大の哲学は、「自然との共生」です。彼らは、ブドウ栽培から醸造に至るまで、一切の化学物質を使用せず、可能な限り自然なプロセスでワインを生産しています。畑では、有機栽培とビオディナミ農法を導入し、土壌の健全性を保ち、ブドウ樹が本来持つ生命力を最大限に引き出すことを目指しています。除草剤や化学肥料、農薬は一切使用せず、代わりに植物や堆肥を用いた自然な方法で土壌を豊かにしています。これにより、ブドウは健全に成長し、テロワールが持つ本来の複雑な要素を吸収することができます。また、ブドウの病害対策には、天敵を利用したり、ボルドー液などの自然由来の防除剤を最小限に留めて使用したりするなど、細心の注意を払っています。彼らは、ブドウ畑は単なる生産の場ではなく、多様な生物が生息する生態系の一部であると捉え、その生態系のバランスを尊重しています。例えば、畑の周囲にはハーブや花を植え、ミツバチやテントウムシなどの益虫を誘引することで、自然な形で害虫の発生を抑制しています。こうした努力は、彼らのワインに、より一層の生命力と、飲む人に安心感を与える要素となっています。醸造においても、この自然への敬意は一貫しています。野生酵母のみを使用し、温度管理も最小限に抑えることで、ブドウ本来の風味とアロマを損なわないよう細心の注意を払っています。SO2(亜硫酸)の使用も極力控え、瓶詰め時にもごく少量しか添加しません。これにより、ワインはよりピュアで、ブドウそのものの味わいをダイレクトに感じることができます。また、彼らは伝統的な木樽での熟成を重視しており、ワインが時間をかけてゆっくりと呼吸し、複雑な風味と骨格を形成していくことを促しています。熟成期間はワインの種類によって異なりますが、それぞれのワインが最適な状態になるまで、辛抱強く待ち続けます。彼らのワインは、時に独特の還元臭や濁りが見られることもありますが、それは彼らが自然なワイン造りに徹している証拠であり、むしろその個性こそが彼らのワインの魅力となっています。彼らは、ワインは「生き物」であると考え、その成長を暖かく見守りながら、最終的なボトリングに至るまで、可能な限り介入を避けることで、ブドウが持つ本来のポテンシャルを最大限に引き出しています。
多様性と個性豊かなワインラインナップ
ル・クロ・デュ・チュ=ブッフのワインは、その多様性と個性豊かなラインナップも魅力の一つです。主要な品種であるソーヴィニヨン・ブランからは、キリッとしたミネラル感とフレッシュな果実味が特徴の「ソーヴィニヨン(Sauvignon)」や、より複雑な熟成感を伴う「レ・モロン(Les Morins)」など、複数のキュヴェが生産されています。これらの白ワインは、柑橘系の爽やかなアロマに加え、白い花やハーブのニュアンス、そしてキンメリジャン土壌由来のシャープなミネラル感が特徴です。熟成させることで、さらに複雑な香りとまろやかな口当たりへと変化し、長期熟成のポテンシャルも秘めています。特に、「レ・モロン」は、樹齢の高いブドウから造られ、より凝縮感のある果実味と奥行きのあるミネラル感が楽しめます。また、赤ワインでは、ガメイ種とコー種から造られる「ガメイ(Gamay)」や、ピノ・ノワール種から造られる「ピノ・ノワール(Pinot Noir)」が代表的です。ガメイは、ベリー系のチャーミングな果実味と、軽やかなタンニンが特徴で、どんな料理にも合わせやすい汎用性の高いワインです。一方、ピノ・ノワールは、より繊細で複雑なアロマと、エレガントな酸、滑らかなタンニンが魅力で、熟成させることでさらにその真価を発揮します。彼らの赤ワインは、ロワールのテロワールを反映し、ブルゴーニュのそれとは異なる、独自の個性を確立しています。さらに、彼らは様々な試みを積極的に行っており、シャルドネやその他土着品種を用いた少量生産のキュヴェも存在します。これらのキュヴェは、彼らの探求心と、ロワールの多様なテロワールへの理解の深さを示しています。ル・クロ・デュ・チュ=ブッフのワインは、それぞれのキュヴェが明確な個性と物語を持っており、その日の気分や料理に合わせて選ぶ楽しみがあります。彼らのワインは、単に喉を潤すだけでなく、飲む人に喜びと感動を与え、自然とのつながりを感じさせてくれる、まさに「生きたワイン」と言えるでしょう。彼らのワインは、自然派ワインの愛好家はもちろんのこと、ワインの奥深さを知りたいと願う全ての人に、ぜひ一度は体験してほしい珠玉の逸品です。彼らのワインは、時間の経過とともに表情を変え、飲むたびに新たな発見があるでしょう。それは、彼らがブドウ畑からボトルまで、愛情と情熱を注ぎ込み、自然の恵みを最大限に引き出している証拠です。
ル・クロ・デュ・チュ=ブッフの代表キュヴェ
2022 VDF ラ・ゲルリー / ル・クロ・デュ・チュ=ブッフ
2023 VDF レ・マデール / ル・クロ・デュ・チュ=ブッフ
ル・クロ・デュ・チュ=ブッフのおすすめ商品のラインナップは下記からご覧いただけます。