マルク・ソレル/Marc Sorrel

マルク・ソレル-Wine Library

Marc Sorrel

伝統と革新の狭間で輝くドメーヌ・マルク・ソレル

 ドメーヌ・マルク・ソレルは、北ローヌに位置する名門ワイン生産者であり、特にエルミタージュ(Hermitage)およびクローズ・エルミタージュ(Crozes-Hermitage)地域のテロワールを深く探求するスタイルで知られています。小規模ながらも卓越した品質へのこだわりを持ち、伝統的手法と現代的な感覚を融合させながら、シラー(Syrah)を主体とする赤ワインおよびマルサンヌ(Marsanne)/ルーサンヌ(Roussanne)を軸とした白ワインを手がけています。

 ソレル家)は、19世紀末からこの地域に関わりを持っており、ドメーヌの起源は 1928年にフェリックスによって正式に設立されたとされています。 初期には葡萄をネゴシアン)に販売していた時期もありましたが、1970年代から息子のアンリが自ら瓶詰めを始め、以後ドメーヌとしての評価を高めていきます。 1982年のアンリの没後、マルク(Marc Sorrel)が家業を継承。彼は既存の畑を引き継ぐだけでなく、新たな区画の取得も重ね、エルミタージュの優良リュー・ディ(lieu-dit:小区画)を多く所有することで、ワインの表現の幅を拡張していきました。現在、ワイナリーの運営はマルクの子、ギョームが中核を担っており、2019年ヴィンテージ以降、より高い精度と凝縮感を追求する方向へと進化を遂げています。

 ドメーヌ・マルク・ソレルは、規模としては比較的小さく、量よりも質に重きを置く生産者ですが、そのワインは北ローヌの最高峰のひとつとして高い評価を受けています。特に「Hermitage Rouge Le Gréal(ル・グレアル)」と「Hermitage Blanc Les Rocoules(レ・ロクール)」は、ドメーヌの象徴的なキュヴェとして知られています。

エルミタージュの精髄を紡ぐ土地

 マルク・ソレルの畑は、主にエルミタージュとその周辺に位置する複数の著名リュー・ディ(Les Bessards, Les Greffieux, Les Plantiers, Le Méal, Les Rocoules 等)を含んでいます。  これらの区画はいずれも急傾斜の花崗岩質土壌を持ち、ローヌ川に近接する立地から昼夜の寒暖差が生まれやすく、果実に繊細なアロマと骨格を与える要因となります。

 特筆すべきは、Le Méal 区画および Greffieux 区画です。Le Méal はエルミタージュの核心部にあり、シラー種のポテンシャルを最大限に引き出す条件が整った場所と目され、しばしば最上キュヴェ「Le Gréal」の原料となる主要な畑でもあります。 Greffieux 区画は香りと優雅さをもたらす役割を果たし、ブレンドの中で調和を支える存在とされています。 白ワイン用の主要区画、レ・ルクールも極めて重要です。ここにはマーサンヌとルーサンヌを主体とした古樹が所在し、特有のミネラル感と熟成耐性を備えた白ワインが生まれます。 また、マルクは 1991 年にラルナージュ(Larnage)村の小区画を取得しており、ここでクロズ=エルミタージュの赤・白ワインも生産しています。 

 所有面積としてはごく小規模で、およそ 2.5 ヘクタール強(約 2.5 ha)程度とされています。 各区画には樹齢の高い古木も多く残されており、60 年を超えるものも複数あります。これらの古樹がワインに複雑さと力強さをもたらす基盤となっています。そのほか、畑の管理についてはオーガニックまたは低介入(ノン・インターベンション)的な手法を重視し、化学肥料や過度の除草剤に頼らず、土壌の健全性を維持しながら葡萄のポテンシャルを引き出す方法が採られています。

 このように、ドメーヌ・マルク・ソレルの畑は、典型的な北ローヌ・エルミタージュのテロワールを体現する複数のリュー・ディを網羅しており、それぞれの位置・土壌条件・樹齢を活かしたブレンドと単一区画キュヴェによって、複雑性と個性を兼ね備えたワインを造り出しているといえます。

代表的なキュヴェ

2012 エルミタージュ

2019 エルミタージュ