シルヴァン・パタイユ/Sylvain Pataille

シルヴァン・パタイユ - Wine Library

Sylvain Pataille

マルサネのトップ生産者 シルヴァン・パタイユ

 シルヴァン・パタイユは、マルサネの地で20haの畑を管理し、ピノ・ノワール、シャルドネ、アリゴテを栽培しています。ボルドーで醸造学を修めた後、コンサルタントとしての経験を積み、1999年に祖父の畑を受け継いで独立しました。2007年にバイオロジック農法を開始し、翌年には全ての畑をバイオダイナミックへ転換しました。セラーは村内に点在し、少しずつ統合を進めながら、伝統を守りつつも進化を続けます。2013年から全キュヴェで亜硫酸無添加醸造に挑戦し、果皮の成熟を見極めながら、長いマセレーションと熟成を経て、ピュアなブルゴーニュを追求。一時期は醸造学校でも教鞭をとり、現在もブルゴーニュの10社で醸造コンサルタントとして活動しており、近代醸造学の理解も深いです。自社の畑では丁寧な畑仕事とセラーでの時間をかけた醸造が生み出すワインは、土地の個性を映し出し、現代らしい介入の少ないアプローチでありながらクラシックな雰囲気を備え、今後のブルゴーニュの可能性を感じさせるワインを生産しています。

マルサネという土地の表現

 パタイユが本拠地に据えるマルサネは、ブルゴーニュの他の銘醸地に比べると「格下」とされる時代が長く続いていました。しかしパタイユは、この土地の冷涼な気候や多様な土壌にこそ独自の可能性があると見抜きます。実際、彼のワインは果実のピュアさと生き生きとした酸、繊細で透明感のあるスタイルを特徴としており、マルサネの新しい価値を体現しています。彼の活動によって、マルサネの地位は近年急速に向上し、評論家やワイン愛好家の注目を集めています。

 シルヴァン・パタイユを語るうえで欠かせないのが 「アリゴテ(Aligoté)」 です。彼はアリゴテを複数の区画から独立したキュヴェとして仕込み、長らくセカンド格とされてきた品種に新たな命を吹き込んでいます。樹齢の古いアリゴテから造られる彼のワインは、単なる軽快さを超え、複雑さと熟成ポテンシャルを備えた表現となり、ブルゴーニュの多様性を再認識させる存在です。パタイユのアリゴテは、ブルゴーニュ自然派の象徴的な取り組みといえるでしょう。

 セラーにおけるパタイユの哲学も、畑での実践と響き合います。発酵には天然酵母を用い、補糖や補酸は行わず、必要最小限の亜硫酸しか使用しません。赤ワインでは全房発酵(ホールクラスター)を積極的に取り入れ、果梗由来のスパイスや構造をワインに与えます。圧搾はやわらかく、抽出は穏やか。熟成は樽で15〜18か月、ときには24か月をかけ、過度な操作を避けることでブドウそのものの表情を生かします。

 結果として生まれるワインは、果実の鮮明さと酸の美しさを兼ね備え、透明感と奥行きを持つスタイルに仕上がります。評論家から「果実の純度とミネラルの緊張感が際立つ」と評されるその味わいは、ナチュラルワインの文脈を超え、クラシックなブルゴーニュの文脈にも通じています。

代表的なキュヴェ

2022 マルサネ・ルージュ ランセストラル

所有する13haの畑から、樹齢の高い良質なブドウのみをセレクトして造られる最上級品。圧倒的なパワーと高い完成度。マルサネの丘にある最優良区画、Clos du Roy・Clemengeot・Les Ouzeloyの最も古いブドウ樹のセレクションである。

2020 マルサネ・ルージュ オン・クレモンジョ 

 

 

2022 マルサネ ロゼ フルール・ド・ピノ

パタイユの中でも一際異彩を放つキュヴェ。使用されるピノ・ノワールとピノ・グリはいずれも高樹齢の古木から作られる。2年の熟成を経て、カラメルや微かな塩気をまとった香気を放つ素晴らしいワイン。

2018 ブルゴーニュ アリゴテ クロ・デュ・ロワ