ローラン・ムートン/Laurent Mouton

Laurent Mouton
古き由緒と革新の交錯 — ドメーヌ・ローラン・ムートンの歩み
ブルゴーニュ南部、コート・シャロネーズ(Côte Chalonnaise)地区のジヴリー(Givry)に拠点を置くドメーヌ・ローラン・ムートンは、家族経営の小規模なワイナリーとして丁寧な営みに根差しています。現在の名前と運営体制に至るまでには、数世代にわたる歴史があり、伝統を重んじつつも、現代の消費者と市場の感性に応える革新を取り入れてきた歩みがあります。
初代にあたるエウジェーヌ・ムートンがヴィニョロンとしてぶどう栽培を始め、その後チャールズ・ムートンが拡張を図りました。しかし当時は自家瓶詰めをせず、地域ネゴシアンに販売するスタイルが一般的でした。1970年代に入ると、ジェラール・ムートン夫妻の代で自社瓶詰めに取り組み、1976年にはドメーヌ名義での販売を始めたとされています。これにより、品質とアイデンティティをマーケットに直接提示できる体制が整いました。これは多くの小規模ドメーヌが辿る道でもあります。
2002年にはローラン・ムートン(Laurent Mouton)が参画し、現在は父ジェラールと共同で運営を行うほか、ブドウ栽培・醸造双方において彼自身のヴィジョンを加えるようになります。 このような循環的な世代交代と継続性こそが、ドメーヌ・ローラン・ムートンの根幹をなし、テロワールとの対話を深める基盤となっています。
自然と精緻を融合するテロワールと栽培方針
ドメーヌ・ローラン・ムートンの畑は、主としてジヴリ(Givry)地区に展開しており、赤ワイン主体のピノ・ノワールに加え、白ワインやコトー・ブルギニヨン(Coteaux Bourguignons)名義のワインも手がけています。彼らが所有する第一級区画(1er Cru)には、Clos Jus、Clos Charlé、Grand Berge、Grands Pretans などがあり、これら各区画の個性を活かすべく、醸造段階での詳細な扱い分けがなされています。
ムートン家では「自然との共存」を志向し、過度な化学介入を避け、土壌の健全性を保つ施策を取り入れてきました。畑ではプルーミング(除枝)、間引き、グリーンハーベスト(果実の間引き)などを丁寧に行い、最終的に良質なぶどうのみを収穫することを目指しています。これにより、凝縮度と香味の純度を確保しつつ、健全な樹体を維持する体制が整えられています。 収穫は手摘みによって行われ、熟度やブドウの状態を細かくチェックしながら適期収穫を実践します。 各区画は標高、向き、土壌構成が微妙に異なり、石灰質土壌を含む地質が多く見られます。Clos Jus 区画では標高約 260 m、向きは東向き、面積はおよそ 2.0575 ヘクタールと公表されています。
こうした多様なテロワール条件を背景に、ムートンは「区画個別表現」の思想を強く持っており、最終的なブレンド比率や発酵条件を、ヴィンテージごとに細かく調整しています。これにより、ある年は Clos Jus が前面に出るワインが得られ、別年は Grand Berge や Charlé の香気が際立つ構成になる、といった変化が生まれやすくなっています。
代表的なキュヴェ
所有する一級畑で最もガストロノミックと言われ高い評価を獲得知っている区画。樹齢は25年で除梗率100%、新樽30%。

