コシュ・デュリ/Coche Dury

Coche Dury
ムルソーの頂点に君臨する白ワインの聖杯
ブルゴーニュの白ワイン、特にムルソーの地において、世界中の愛好家がその名を聞くだけで畏敬の念を抱く存在が、ドメーヌ・コシュ・デュリ(Domaine Coche-Dury)です。このドメーヌが造り出すワインは、単なる最高級のシャルドネという枠を超え、ワインの持つ精密さ、エネルギー、そして魂を具現化した「液体のアート」として崇められています。その希少性は極めて高く、市場に出回ること自体が稀であり、手に入れるためには法外な価格と幸運、そして何よりも強い情熱が必要とされる、まさに「白ワインの聖杯」と呼ぶにふさわしい存在です。
ドメーヌの評価を決定づけたのは、先代のジャン=フランソワ・コシュ氏です。彼は1970年代からドメーヌを率い、異常なまでの完璧主義と、寝る間を惜しんで畑に捧げる献身的な労働によって、コシュ・デュリ独自のスタイルを確立しました。現在では息子のラファエル・コシュ氏がその志を継いでいますが、その哲学は一切揺らぐことがありません。彼らの成功の根底にあるのは、驚くほどシンプルでありながら実践が最も困難な「畑での徹底した手作業」です。コシュ・デュリのワインが持つ唯一無二の緊張感と深みは、セラーの中での魔法ではなく、一年を通じて土壌と対話し、一房のブドウの成熟を極限まで見極めるという、極めてストイックな農作業の結果として生まれるものです。
畑に捧げる狂信的な献身と低収量とテロワールの結晶
コシュ・デュリのワインが持つ圧倒的な凝縮感の源は、徹底した低収量にあります。ジャン=フランソワ氏は「良いワインを造るには、まず自分の畑を知り尽くし、ブドウ樹一本一本の健康状態を把握しなければならない」と語り、常に自分自身の目で畑を観察し続けてきました。彼らは、芽かきや剪定を極めて厳格に行い、さらに夏の間にはグリーンハーベストを行うことで、一株あたりの果実の数を劇的に減らします。これにより、大地から吸い上げられたミネラルと栄養素は、残されたわずかなブドウにすべて凝縮されます。
彼らが所有する畑は、本拠地であるムルソーを中心に、ピュリニー・モンラッシェやヴォルネイ、モンテリー、そして特級畑のコルトン・シャルルマーニュにまで及びます。特にムルソーにおける「レ・ルージョ(Les Rougeots)」や「レ・ペリエール(Les Perrières)」といった区画から生まれるワインは、その村名格や一級格という格付けを遥かに超越した評価を得ています。コシュ・デュリのワインに共通するのは、土壌由来の強いミネラル感と、それを支える強靭な酸の骨格です。彼らはヴィンテージの個性を尊重しつつも、どの年であってもコシュ・デュリだと一目でわかる、水晶のように澄んだ純度と、口の中で爆発するようなエネルギーをワインに持たせることに成功しています。

