グラハム / Graham

Graham
ポルトガルの至宝、ドウロの風土とシミントン・ファミリーが受け継ぐポートワインの神話
世界最高のワイン産地の一つ、ポルトガルのドウロ・バレー。この峻厳な渓谷が生み出す「ポートワイン」の世界において、頂点に君臨する名門が「W. & J. グラハム(グラハム)」です。その歴史は1820年、ウィリアムとジョンのグラハム兄弟がポルトに設立したことから始まります。当初はテキスタイル貿易を営んでいた彼らですが、最高品質のワインへの情熱を抑えきれず、自らの名を冠したポートワインの生産に乗り出しました。1890年には、ドウロ・バレーの中でも最高の立地とされる「キンタ・ドス・マルヴェドス」を購入。この出来事は、グラハムが「ポートの帝王」としての地位を不動のものにする決定的な転換点となりました。
1970年、グラハムは同じくポートワインの伝説的家系である「シミントン・ファミリー」の手に委ねられます。シミントン家は、何世代にもわたりドウロの地でワインを造り続けてきた、まさにポートワインの「守護者」とも言える一族です。彼らはグラハムが持つ「豊潤で甘美、かつ力強い」という独自のスタイルを完璧に理解し、それをさらに洗練された次元へと引き上げました。現在、グラハムはシミントン家の細やかな管理のもと、伝統的な足踏みによる破砕(ラガレス)と最新の醸造技術を融合させ、世界中の王室やコレクターが羨望の眼差しを向ける究極の一本を世に送り出し続けています。
黄金の丘「キンタ・ドス・マルヴェドス」濃密なスタイルを形作るテロワール
グラハムのワインを一口含んだ時に感じる、あの圧倒的な果実の凝縮感とベルベットのような滑らかさ。その秘密は、フラッグシップ・ヴィンヤードである「キンタ・ドス・マルヴェドス」に隠されています。ドウロ川の北岸に位置するこの畑は、南向きの急斜面に広がり、ポルトガルの強烈な太陽を一日中浴びることで、ブドウは極限まで糖度とエキス分を蓄えます。土壌はドウロ特有の「シスト(片岩)」で構成されており、水はけが良く、ブドウの根は水分を求めて硬い岩盤を突き抜け、地中深くへと伸びていきます。この過酷な環境こそが、グラハム特有の力強い骨格と、深みのある複雑な味わいを生み出す源泉なのです。
醸造においても、グラハムは「リッチさ」へのこだわりを隠しません。他のポートハウスと比較しても、グラハムのスタイルはより甘美で、果実のボリュームが前面に出ているのが特徴です。これは、発酵を止めるタイミングや、ブランデー(グレープスピリッツ)を添加する際の絶妙なバランス、そして何よりもブドウの選別における厳格な基準によって保たれています。特に「ヴィンテージ・ポート」においては、最高の年(宣言年)にしか造られない希少性も相まって、数十年、時には一世紀を超える熟成に耐えうる驚異的な生命力を誇ります。年月を経て、荒々しいタンニンが溶け込み、チョコレートやスパイス、ドライフルーツのような官能的なアロマへと昇華していく様は、まさに液体が奏でる壮大な叙事詩と言えるでしょう。