ハーン / Hahn

Hahn
ニコラス・ハーンが描いた夢とカリフォルニアワインの革命
カリフォルニア州モンテレー・カウンティ、今でこそ世界屈指のピノ・ノワールとシャルドネの聖地として知られる「サンタ・ルシア・ハイランズ(SLH)」ですが、この地が公式な栽培指定地域(AVA)として認められ、世界地図にその名を刻むまでには、一人の男の飽くなき情熱と挑戦の物語がありました。その中心人物こそが、ハーン・ファミリー・ワインズの創業者、ニコラス(ニッキー)・ハーン氏です。スイス出身でロンドンの金融界で成功を収めていた彼は、1970年代半ば、カリフォルニアの未開のポテンシャルに魅せられ、モンテレーの地に足を踏み入れました。彼が最初に取得した「スミス&フック」の牧場は、かつて馬の放牧地であった場所ですが、ニッキー氏はその痩せた土壌と冷涼な気候こそが、ボルドー品種やブルゴーニュ品種の栽培に理想的であることを見抜いていました。
当時、モンテレーでのワイン造りはまだ黎明期にあり、その品質を疑う声も少なくありませんでした。しかし、ニッキー氏は私財を投じてブドウ畑の整備を進めると同時に、この地域のテロワールの独自性を証明するために奔走しました。彼の多大なる尽力の結果、1991年に「サンタ・ルシア・ハイランズ」は独立したAVAとして認可され、モンテレー・ワインの地位を飛躍的に向上させることとなったのです。ハーン・ワインは、単なるワイナリーの枠を超え、一つの産地を世界レベルへと押し上げた「パイオニアの象徴」として、今もなおその誇りを持ち続けています。ニッキー氏が描いた「ヨーロッパの伝統的なエレガンスと、カリフォルニアの豊かな果実味の融合」という夢は、現在も家族経営ならではの細やかな配慮と、次世代への確かな継承によって、一本一本のボトルの中に息づいています。