ジュール・デジュルネイ / Jules Desjourneys

ジュール・デジュルネイ - Wine Library

Jules Desjourneys

アルノー・アントで経験を積み、コシュ・デュリを師と崇める必見生産者

 ブルゴーニュの最南端、ボジョレーとマコネの狭間で、クラシックと前衛を見事に融合させる造り手がいます。ドメーヌ・ジュール・デジュルネ(Domaine Jules Desjourneys)。その名は、自然派ワインの父ジュール・ショーヴェへのオマージュであり、また「journey(旅)」という言葉が示すように、ワインを通じて新たな地平を探求する哲学を象徴しています。

このドメーヌを率いるのは、情熱的な造り手 ファビアン・デュペレー(Fabien Duperray)。かつてはブルゴーニュのトップ・ドメーヌ――DRC、アルノー・アント、コシュ・デュリなど――の販売代理人を務めた人物です。彼は流通のプロとして世界中の偉大なワインを見てきましたが、「真に心を震わせるワインは、土地の声をそのまま映すものだ」と確信し、40歳を迎えるころに自らのワイン造りに人生を捧げる決断をします。そして2007年、ボジョレーの地に自らのドメーヌを設立しました。

ボジョレーとマコネを結ぶ「静謐なる革命」

 ドメーヌ創設当初、彼が選んだのはフルーリーとシェナの丘陵地帯に点在する古木の区画でした。樹齢は50年から100年にも及び、砂質花崗岩と青い粘板岩が混ざる複雑な土壌。これらは一見素朴なガメイの産地として知られていましたが、デュペレーはこの地に「グラン・ヴァンの潜在力」を見出しました。栽培は完全なビオディナミ農法。化学肥料や除草剤は一切使わず、畑には馬を入れて土を耕し、自然のリズムに合わせて作業を進めます。収穫はすべて手作業で行われ、収量は極端に低く、平均20ヘクトリットル/ヘクタール前後という贅沢な低収量を維持しています。ブドウは完熟を待って摘まれ、選果も徹底。健康な果実だけを用いることで、凝縮感と緻密さを両立させたガメイを実現しています。

 彼の目指すスタイルは「果実の快楽」ではなく「構造と熟成のワイン」。発酵は自然酵母で行い、必要最低限の介入に留め、長期の熟成を経てリリースされます。その味わいは、かつてボジョレーが「軽快で早飲み」とされた時代の印象を一新し、ブルゴーニュのグラン・クリュに比肩する深みを持つと評されています。

 2008年以降、ファビアン・デュペレーは活動の範囲をマコネ地区にも広げました。ソリュトレ=プイィやヴェルジッソンなどの標高の高い丘陵地に、古木のシャルドネを栽培しています。これらの畑もまたビオディナミで管理され、極めて低収量で収穫されます。マコネの白ワインは一般に“フルーティで親しみやすい”スタイルが多い中、デュペレーの白はその概念を覆します。彼のプイィ=フュイッセ(Pouilly-Fuissé)サン=ヴェラン(Saint-Véran)は、緊張感と厚み、そしてミネラルの持続が共存する堂々たる風格を持ち、ワイン・アドヴォケイト誌は「ギュファン・エナンやボングランと並び、マコネのエリートの一員として語るに値する」と絶賛しました。熟成を前提とした造りのため、瓶内での変化も見事であり、時間の経過とともに蜂蜜やナッツ、塩気を帯びた余韻が長く続く、極めて洗練されたシャルドネが生まれます。

探し出すためにあらゆる努力を払う価値があります。ギュファン・エネンや ボングランなどと並んで、マコネのエリートの一員として語られるに値する
- Wine Advocate

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2019 サン・ヴェラン