カヴァロット/Cavallotto

Cavallotto
カヴァロット(Cavallotto)は、イタリア・ピエモンテ州ランゲ地区、バローロ村の北西部に位置するバローロの伝統派生産者です。正式名称は「Cavallotto Tenuta Bricco Boschis」であり、その名が示す通り、銘畑ブリッコ・ボスキスを単独所有することによって知られています。家族経営のワイナリーで、創業から一貫してバローロの伝統を尊重し、長期熟成に耐えるネッビオーロを生み出してきました。
カヴァロット家がブリッコ・ボスキスの畑を所有したのは1928年のことです。バローロ村の中でも恵まれた南向き斜面に位置するこの区画は、標高350〜370メートルに広がり、石灰質粘土を主体とする土壌から、力強くもエレガントなネッビオーロを生み出します。1946年、オルランド・カヴァロットが自社元詰めを開始し、バローロの伝統派生産者としての歩みを始めました。当時はバルローロの多くがネゴシアン経由で販売されていた時代であり、畑とワインの個性を直接世に伝える試みは先駆的でした。
畑は現在24ヘクタールに広がり、その大部分はブリッコ・ボスキスに集中しています。ネッビオーロを中心に、バローロDOCGのキュヴェに加え、バルベラ、ドルチェット、フレイザといった土着品種も栽培しています。ブリッコ・ボスキス内にはサン・ジュゼッペやヴィニャ・サン・ロレンツォといった区画もあり、特に「バローロ・リゼルヴァ・サン・ジュゼッペ」は長期熟成型バローロの象徴として国際的に高い評価を受けています。
カヴァロットの哲学は、畑の個性を最大限に引き出すことにあります。栽培は有機的なアプローチで行われ、化学肥料や除草剤を排除し、自然環境と共生する手法が採られています。ブドウの収量は厳しく制限され、樹齢の高いブドウから凝縮した果実が得られます。収穫は手作業で行われ、果実は丁寧に選別されます。醸造においては、伝統派らしく長期のマセラシオンを行い、ネッビオーロの色調、タンニン、香味をしっかりと引き出します。その後、数千リットル規模の大樽(ボッティ)でゆっくりと熟成され、樽香を控えめにしつつ、果実と土壌の個性を生かしたクラシックなスタイルに仕上げられます。
ワインのスタイルは一貫して骨格が強く、タンニンが豊富で、酸がはっきりと残る構造を持っています。若いうちは閉じた印象を与えることもありますが、時間をかけることで赤い果実、バラやスミレといった花の香り、タール、リコリス、スパイス、土のニュアンスが重層的に現れてきます。熟成を経ると、ドライフルーツや革、トリュフ、森の下草の香りが加わり、深みと複雑さが格段に増します。リゼルヴァはリリースまでに10年以上を要することもあり、数十年単位で熟成するポテンシャルを備えています。これはまさに伝統派バローロの真骨頂といえます。
近年は気候変動の影響がランゲ地方全体に及んでいますが、標高のあるブリッコ・ボスキスの畑は、昼夜の寒暖差と風通しの良さからブドウの健全な成熟が維持されやすく、暑い年でも酸が保たれる傾向にあります。こうした自然条件に加え、カヴァロット家の代々にわたる畑への献身が、長期的な品質の安定につながっています。