カゼ・ティボー

9年間の準備期間を経てリリース

カゼ家は、ヴァレ・ド・ラ・マルヌに10年間続く歴史あるヴィニュロンの家系である。1953年に現当主ファビアンの祖父にあたるロジャー・カゼがドメーヌを設立し、初めて自分でシャンパーニュを作り販売した。次の世代にあたるファビアンの父は自分でシャンパーニュを売るのをやめ、全てネゴスに販売していたが、ファビアンが父からワイナリーを引き継いだ2009年、自身のブランドとしてカゼ・ティボーを立ち上げた。しかし、すぐに自分のシャンパーニュを作り始めるのではなく、畑の状態を確認し、土壌を改善させて、自分のブドウに納得できるようになった2013年に初めて瓶詰めし、2018年に満を持してファーストリリース。そのクオリティは驚くべきものであり、即座に世界的な注目を浴びることとなった。 

ヴァレ・ド ・ラ・マルヌのテロワールを追求

マルヌ川右岸に位置する3つの村、シャティヨン・シュール・マルヌ村、ヴァンディエール村、ルイユ村に点在する15の区画を所有しており、所有面積は2,6haほどである。村の管理はほとんど手作業で、殺虫剤や農薬は使用せずオーガニック栽培を行っている。プレスした果汁に自然酵母のみを使い、アルコール発酵、MLFは全てオーク樽を使用する。ファビアンはステンレスタンクよりもオーク樽の方が果実、酸、樽のすべての要素がより統合されると感じるため、オーク樽の使用にこだわっている。またオーク樽のサイズも大きすぎると酸素が足りずフレッシュすぎる味わいになってしまうので、114L、228L、350Lの3種類のサイズを使い分ける徹底ぶりだ。それぞれの樽で実験を繰り返し最善だと思える味わい味わいを探していく。このサイズの樽が正解だというものはなく、観察と考察の繰り返しだとファビアンは言う。また、混植混醸からシャンパン作りを行うなど、このエリアで前例のない前衛的な試みにおいて、突出したクオリティのワインを生み出している。細部へのこだわりを見せるファビアンのフィロソフィーは「土壌への敬意、ワインへの情熱によってこの土地の個性を表現する」。その言葉からは自然に最も敬意を払い、それぞれの区画のテロワールを映し出すシャンパーニュを造ることへの美しく真っ直ぐな信念が強く感じられる。彼の手で表現されたヴァレ・ド・ラ・マルヌの魅力に世界が熱狂している。