ドメーヌ・ルーロ / Domaine Roulot

ドメーヌ・ルーロ - Wine Library

Domaine Roulot

ムルソーに「緊張感」と「透明感」をもたらした精密なる芸術家

ブルゴーニュの白ワインの聖地ムルソーにおいて、コシュ・デュリコント・ラフォンと並び「三指」に数えられる至高の存在が、ドメーヌ・ルーロ(Domaine Roulot)です。このドメーヌの名を世界に轟かせたのは、先代のギュイ・ルーロ氏であり、その後を継いだ息子のジャン=マルク・ルーロ氏によって、その名声は揺るぎないものとなりました。ジャン=マルク氏は俳優としての顔も持つ異色の造り手ですが、彼の造り出すワインには、舞台の上で演じられる緻密なドラマのように、一分の隙もない完璧な構成美が宿っています。

ドメーヌ・ルーロの真髄は、ムルソー村の中に点在する多様なリュー・ディ(特定の小区画)を、それぞれ独立させて瓶詰めする手法にあります。通常、村名格のワインは複数の畑をブレンドしてバランスを取ることが一般的ですが、ルーロはそれぞれの畑が持つ微妙な個性を見事に描き分けます。

例えば、「レ・リュシェ(Les Luchets)」はピュアで軽やかな果実味が特徴であり、「レ・ティレ(Les Tillets)」は標高の高さに由来する鮮烈な酸とエネルギーを放ちます。そして、ルーロの看板とも言える「レ・テッソン(Les Tessons)」は、一級畑に匹敵するほどの深みと複雑性を備え、圧倒的なミネラルの骨格を見せてくれます。これらのワインを比較して味わうことは、ムルソーという土地が持つ無限の表情を読み解く、最も贅沢な「テロワールの授業」に他なりません。彼らの手にかかれば、石灰岩の硬さや日照の僅かな違いが、ワインの輪郭や余韻の長さに至るまで、驚くほど正確に反映されます。

ドメーヌ・ルーロのワインは、そのあまりの希少性と人気から、今や世界中のコレクターが血眼になって探す「幻のボトル」の一つとなりました。しかし、その人気の理由は決してブランド力だけではありません。一口飲めば、そこに込められたジャン=マルク氏の誠実さと、ムルソーの大地が奏でる清冽な調べが、魂にまで響いてくるからです。それは、まさにブルゴーニュの白ワインが到達しうる、フィネスの極致といえるでしょう。