フィリップ・アリエ/Phillipe Alliet

フィリップ・アリエ - Wine Library

Phillipe Alliet

カベルネ・フランの真髄を見せる別格のシノン

カベルネ・フランに低評価をしがちであったロバート・パーカーの考えを覆したのは1995Vtのフィリップアリエだそうです。フィリップアリエのスタイルはフランの特徴でもある「青さ」を出さないことを意識し、豊かでありながらしなやかで上品な果実味を味わえます。ジャンシス・ロビンソンですら、彼のワインをブラインドで飲んだ際に「上級のボルドー」と答えたほどの綿密なストラクチャーを持ち、品種やアペラシオンの域を超越した別格のワインです。

力強いストラクチャーを生む二つの銘醸畑

フィリップアリエの目指すワインは、きめ細やかな繊細さを持ちながらストラクチャーがしっかりした力強い味わいであり、その実現のために樽熟成を用います。ドメーヌを引き継いだ1985年当初は樽熟成に耐えうるカベルネ・フランの栽培に苦労し、1993年に醸造の基礎が固まるまで長い年月の試行錯誤を重ねました。

1996年に当時手付かずであった3haの畑コトー・ド・ノワールを獲得し、荒地だったところに2度にわたって植え付けを行いました。 コトー・ド・ノワールはしばしば「シノンのグラン・クリュ的存在」と評されます。実際、専門誌や評論家はこの区画をシノン最高峰のひとつと位置づけ、ボルドー右岸の名高い赤ワインに匹敵する品質を持つと称賛することも少なくない素晴らしい区画です。濃密さとエレガンスを兼ね備え、土地の力強さを真に表現するこの畑は、シノンのカベルネ・フランの可能性を世界に示す象徴的な存在です。

2001年には、リュイスリー3haの栽培権を取得。ここは小麦畑でしたが、その土質と真南向きという条件から、 コトー・ド・ノワールをさらに上回る可能性を感じ、葡萄の樹の植え付けました。そこで作られるワインは濃厚さよりもエレガンスと均衡 が際立ちます。ブラックチェリーや赤系果実の純粋な香りに、スパイスやわずかなチョーキーなミネラルのニュアンスが重なり、口に含むと透明感のある酸が全体を引き締めます。タンニンはきめ細かく、舌触りはなめらかで、余韻にはしっとりとした石灰質由来のミネラルが長く残ります。若いうちから親しみやすい一方で、数年から10年を超える熟成によって果実と酸、タンニンが調和し、より深みと複雑さが広がります。

「シノンのグラン・クリュ」と称されるコトー・ド・ノワールが力強さの象徴とすれば、リュイッスリーは繊細さと気品を体現する区画です。凝縮感に頼らず、土地の声を素直に伝えるようなスタイルは、ブルゴーニュを好む愛好家にも高く評価されています。

この二つの畑はフィリップアリエ とその妻が、一から作り上げた畑で今やカベルネ・フランの銘醸地として世界に誇る最高峰のワインを生み出します。

代表的なキュヴェ

2004 シノン コトー・ド・ノワール

フィリップアリエのトップキュヴェの一つであり、シノン最高峰のワインです。南向きに広がる3haの急斜面の区画

力強い果実に加え、コーヒーやバニラ、胡椒のニュアンスを備えた豊かで複雑な香り。凝縮感に富みシルキーなタンニンを備えるフルボディの味わい。熟成ポテンシャルも備えますが、30分ほど前に抜栓しておくことで十分に真価を味わえます。

2018 シノン

エントリーキュヴェでありながら上質ボルドーと見紛うほどの洗練された味わい

AOCシノンでは通常55hl/haほどのところを35hl/haに抑え、その格段の違いが旨味となって現れます。ロースト香と力強い果実が香り、上質で細やかなタンニンを備えた満足感のある一本。