イヴォン・クレルジェ / Yvon Clerget

イヴォン・クレルジェ-Wine Library

Yvon Clerget

ジャスパー・モーリス大絶賛の若き当主が率いる歴史あるドメーヌ

 ブドウの歴史を紐解く旅において、人知れず息づいてきた畑と家系が、ふとした転機で再び光を浴びることがあります。ドメーヌ・イヴォン・クレルジェ(Domaine Yvon Clerget) はまさにそのような物語を携えています。ブルゴーニュのコート・ド・ボーヌ地区、ヴォルネイ(Volnay)を拠点としながら、優良クリマを所有するこの蔵は、「伝統と再生」というテーマを地で行く存在です。クレルジェ家のワイン造りの起源は、記録上は 1268年 に遡るとされ、以来、ボルネイを拠点にブドウ栽培・ワイン生産に関わってきたと伝えられています。しかしながら、時代の変遷や事情により、2009年に一時的に生産を中断し、2010年から14年まで収穫されたブドウはHenri Boillotなどへの売却に回された期間がありました。

 その後、若き当主 ティボー・クレルジェ(Thibaud Clerget) が2015年に蔵を再開し、かつての家業を受け継ぎつつ、自身の感性を加えてドメーヌを蘇らせました。その間、ティボーはアンリ・ボワイヨとユドロ・ノエラで畑の管理と醸造プロセスを徹底的に学び、その後オレゴンのドメーヌ・ドルーアン、更にはマールボロのギーセン・エステートで研鑽を積みました。彼のワインは、単にしなやかでエレガントなスタイルというだけでなく、ピュアで透明感のある果実味にあふれんばかりのエネルギーが詰まった、絶妙なバランス感が最大の魅力です。彼は28代目にあたるという系譜を背負いながらも、その再建には最新の技術、温暖化への対応、クリマごとの個性の尊重といった現代的課題への挑戦をも折り込んでいます。

ヴォルネイのテロワールを活かした「品格あるピノ・ノワール」

 ティボー・クレルジェは、蔵の再始動にあたって、できるだけ“各地の個性を損なわずに表現する”ことを醸造ポリシーの中心に据えています。そのため、過剰な抽出や過剰な樽香ではなく、素材性と鮮度、構造と緻密さの両立を志向するスタイルが目立ちます。発酵には主に 自然酵母(野生酵母) を用い、除梗/全房発酵を微調整しながら採用する手法をとります。醸造時の温度管理、マセラシオン期間、ピジャージュやルモンタージュ操作についても、ヴィンテージの状態に合わせて最適化を行っています。加えて、彼は熟成樽の使用比率を可変とし、新樽比率を抑え、2~3年使った古樽を多用するスタイルで、樽香を過度に主張させない調和を重視しています。

 更に、ティボーは次のような変遷も経ています。初期リリース期にはやや果実味の強さを前面に出す傾向があったものの、近年は熟度とエレガンス、冷静な構成を重視する方向へ成熟してきたという記述もあります。このような醸造方針は、クレルジェのワインが「品格あるピノ・ノワール」として、かつ「クリマを写し取る鏡」として評価される要因の一つと言えるでしょう。

 2015年のファーストリリースから、一流の評論家からこれ以上ないほどの大絶賛を受け、次世代のブルゴーニュを担う若きライジング・スターとして一気に世界が注目する生産者となりました。

「現在のコート・ドールにはエレガンスとテロワールの表現力・透明感を兼ね備えた造り手はいるものの、そこに本当の実体が伴うワインはない。ティボーのワインはまさにそれを成し遂げている。だからこそこのドメーヌを皆に紹介したい」byアラン・メドー

「何としてでも味わうべきワイン。近年稀にみる新生ドメーヌ誕生のサクセスストーリー。若干28歳にしてティボーは偉大なキャリアを築き上げてしまった」byアントニオ・ガローニ

代表的なキュヴェ

2022 ヴォルネイ 1er Cru クロ・デュ・ヴェルスイユ[モノポール]

タイユピエに隣接する0.68haのモノポールの畑。平均樹齢は40年。ラズベリーと白い花のピュアで爽やかなアロマに控えめな木の香りが重なる。若々しいエネルギーにあふれ、細部のはっきりとした滑らかで上品なテクスチャーを持つミディアムボディーのフレーバー。ミネラルと酸がタンニンと見事にバランスを取り合い、長く続くエレガントなフィニッシュを形作っている。ドメーヌのフラッグシップであり、一飲の価値がある素晴らしいワイン。

2022 ヴォルネイ・1er Cru・カレル・スー・シャペル

0.65haの畑。平均樹齢は65年。軽やかでエレガントなアロマには、赤スグリと黒スグリ、プラム、スパイス、バイオレットのニュアンスを感じる。非常にエネルギッシュなミディアムボディーのフレーバーを持つ。レースのように折り重なる上品なフィニッシュの中に、繊細なミネラルの素晴らしい描写を伺わせる。フィネスのヴォルネイと呼べる逸品。

2022 クロ・ド・ヴージョ

平均樹齢は45年。プラムやブラックチェリー、スパイシーで土っぽさのあるアロマにオークのニュアンスが溶け込んでいる。口の中では上質なテクスチャーと芳醇で力強いフレーバーが生み出す見事なボリューム感が楽しめ、心地よいミネラルとバランスの取れた素晴らしい余韻につながる。