シャトー・コス・デストゥルネル / Château Cos d'Estournel

Château Cos d'Estournel
「サン・テステフのマハラジャ」——インドとの直接取引が生んだ東洋趣味の城館と、第二級格付けを超えるスーパー・セカンドの実力
シャトー・コス・デストゥルネルは、ボルドーのサン・テステフアペラシオンに位置する1855年格付け第二級のシャトーです。「コス(Cos)」とはガスコーニュ方言で「砂利の丘」を意味し、この畑の礫質のテロワールを端的に表しています。創業者ルイ・ガスパール・デストゥルネルは1811年にラフィット・ロートシルトの向かいの斜面に畑を取得し、インドへの直接輸出によって莫大な名声と富を築きました。インドからの帰路、荷物が届かなかった際に荷主が「コスのワインはインドの灼熱に耐えた」と語ったことがこのワインの名声に火をつけたと伝えられています。インドへの熱烈な愛を持ったデストゥルネルは、ザンジバルのスルタンの宮殿から輸入した彫刻扉、ページョダ(東洋の塔)形の建物、象のモチーフなど東洋趣味を随所に盛り込んだ壮麗な城館を建造し、「サン・テステフのマハラジャ」と称されるようになりました。しかし借金の重みに耐えかねた彼は1852年に無念の売却を余儀なくされ、1855年の格付け制定の2年前に逝去しました。それでも格付けでは第二級の栄誉が贈られ、ルイ・ガスパールの情熱と先見性は歴史に刻まれています。
19〜20世紀を通じてロンドンのマーティン家、バスク出身のエラズリス家、オスタン兄弟、1917年にフェルナン・ジネステ家と所有者が変わり、その後ジネステ家とプラ家の共同所有を経てブルーノ・プラが長年経営を率いました。2000年、スイス人実業家ミシェル・レービエが購入し現在に至ります。レービエはその後2013年に隣接する第五級シャトー・コス・ラボリも取得してコスの丘での存在感を拡大し、2009年にはトカイのエトゾロ(ヘトゾロ)エステートを、2020年にはプロヴァンスのシャトー・ラ・マスカロンヌを購入するなどワイン産業への投資を継続しています。また2019年にはサン・テステフに14室の高級ホテル「ラ・メゾン・デストゥルネル」を開業し、ラ・レゼルヴという高級ホテルチェーンも経営しています。
粘土まじりの礫質テロワール、グラヴィティ・フロー醸造——「レ・パゴード・ド・コス」と白ワインが示す、サン・テステフの常識を超えたスーパー・セカンドの全貌
畑は約91ヘクタールで、標高約20メートルの礫質丘陵に東〜南西向きの穏やかな斜面が広がります。カベルネ・ソーヴィニヨンが約60%を占め、メルローが約38%、そして少量のカベルネ・フランが補います。砂利表土に粘土の静脈が交差するサン・テステフ特有の土壌構成が、大西洋からの冷涼な風と相まって典型的なサン・テステフの重厚さとは一線を画す、エレガントでバランスの取れたスタイルを生み出します。醸造はルイ・ガスパールの時代に倣いグラヴィティ・フロー(重力流)方式を採用した最新のセラーで行われ、ポンプによるブドウへのストレスを最小限に抑えています。グラン・ヴァンは16〜18ヶ月間フレンチオーク新樽60〜70%で熟成。セカンドワイン「レ・パゴード・ド・コス」は新樽40%で熟成され、2005年以降はボルドー屈指のセカンドとして高い評価を確立しています。また白ワイン(ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンのブレンド)も限定生産しており、サン・テステフに稀な白ワインの存在として注目を集めています。シャトー・レオヴィル・ラス・カーズやピション・ラランドと並んで「スーパー・セカンド」と称される実力は、1855年の第二級という格付けを大きく凌駕する評価と価格によって証明されています。