シャトー・ヴァランドロー / Chateau Valandraud

Château Valandraud
ボルドーの「悪童」が0.6ヘクタールのガレージから生んだ革命——「ヴァン・ド・ガラージュ」という概念を世界に広めた、サン・テミリオン最高の逆転劇
シャトー・ヴァランドロは、ボルドーのサン・テミリオンアペラシオンに位置するプルミエ・グラン・クリュ・クラッセBのシャトーです。その名は「ヴァル(ヴァロン・ド・フォンガバンの谷)」と「アンドロー(妻ミュリエル・アンドローの姓で、1459年のサン・テミリオンの記録にも登場する旧家名)」を組み合わせた造語です。1989年、アルジェリア生まれで銀行員・食料品商・レストランオーナー・ネゴシアンと転身を重ねてきたジャン=リュック・テュヌヴァンが、ミュリエルと結婚してフォンガバンの谷のわずか0.6ヘクタールの畑を購入したことに始まります。1991年、ベコ家のガレージ(車庫)のセラーを借りて最初のヴィンテージを醸造しました——「ヴァン・ド・ガラージュ(ガレージ・ワイン)」という言葉はまさにこの物理的なガレージから生まれました。世界のワインを席巻するムーブメントの発祥がボルドーのひとつのガレージだったという逆説は、ジャン=リュックの象徴的な逸話となっています。
「サン・テミリオンの悪童(The Bad Boy of Saint-Émilion)」という異名が示す通り、ジャン=リュックは格付けエスタブリッシュメントの壁に何度もぶつかりながらも独自の哲学を貫きました。ロバート・パーカーがヴァランドロにペトリュスを超える高得点を与えた1990年代前半から一躍注目を集め、2002年ヴィンテージでは収穫前の雨を防ぐため畑全体にプラスチックシートを被せるという当時としては前代未聞の決断を下しました。INAOはこれを違反と見なしてサン・テミリオン・グラン・クリュのAOC表示を剥奪。ジャン=リュックはこのワインを「ランタルディ・ド・V…D」と改名して出荷するという伝説的なエピソードを生みました。2006年のサン・テミリオン格付け改定では除外されたものの、2012年についに「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB」という最高格付けへの昇格を果たし——創業からわずか21年という異例の速さで格付けワインの頂点に立ちました。2020年にルフェーヴル家が50%を取得し、2022年の格付け改定でも格付けが確認されています。
0.6ヘクタールから約10ヘクタールへ——ミュリエルに委ねた醸造と新バイオクリマティック・セラーが示す、ガレージから世界的シャトーへの完成形
畑は段階的な区画の買い増しにより、現在は約8.88〜10ヘクタールの複数区画に成長しています。シャトー・ラ・クロットの北側、シャトー・パヴィ・マクカンの南側のフォンガバン谷を中心に、粘土石灰質土壌にメルローを主体にカベルネ・フランが栽培されています。2007年にジャン=リュックが醸造の全権をミュリエルに委ね、初の単独ヴィンテージは2008年。2020年ヴィンテージからはバイオクリマティック(自然換気・環境制御)設計の最新セラーが稼働しています。醸造はステンレスタンク・温度制御木製タンク・コンクリートタンクを組み合わせ、新樽100%で24〜36ヶ月熟成。ISO 9001・ISO 14001の両認証を全プロパティで取得しています。ラインナップはグラン・ヴァンの「シャトー・ヴァランドロ」を頂点に、セカンド「ヴィルジニー・ド・ヴァランドロ」、サード「3・ド・ヴァランドロ」、白ワインとコーシャ対応キュヴェも展開し、「ヴァン・ド・ガラージュ」という概念を生んだ場所が今や最もオープンなシャトーとして週7日年中観光客を迎えるという、ボルドーの歴史でも最大の逆転物語を体現しています。