クレメンス・クルツラー / Clemens Krutzler

Clemens Krutzler
ブラウフレンキッシュの価値を広めた歴史あるワイナリーの新時代
南ブルゲンラントのアイゼンベルクに根差すWeingut Krutzlerは、長年にわたりこの地のブラウフレンキッシュの可能性を切り拓いてきた生産者です。その新世代としてワイン造りに携わっているのが、クレメンス・クルツラーです。Krutzlerといえば、フラッグシップであるPerwolffによってアイゼンベルクのブラウフレンキッシュを国際的に知らしめた存在の一つであり、父ラインホルト・クルツラーはこの地を代表する造り手として広く知られています。しかし、クレメンスは幼い頃から当然のようにワインの道を志していたわけではありませんでした。むしろ料理や食への関心が強く、「料理と食べることが好きだったので、まずはホスピタリティやガストロノミーを学べる観光学校へ進みました」と振り返っています。当初は料理人の道へ進むことも考えていたそうです。
その後、2019年にはLandhaus Bacherで研修を経験しました。Landhaus Bacherはオーストリアを代表するガストロノミーの一つとして知られる名店であり、クレメンス自身も「自分にとってオーストリア最高峰のレストランの一つです」と語っています。また、南フランスのワイナリーで働いた経験もあり、レストランとワイン産地の双方を実際に体験することで、自身の感性を磨いていきました。
こうした経験を通じて培われたのが、伝統や土地への敬意を持ちながらも、既存の価値観に縛られすぎない柔軟な発想です。その姿勢こそが、現在のクレメンスのワイン造りを支える大きな特徴となっています。
2024年にはFalstaff誌が選ぶ「ブルゲンラント最優秀若手ワイン生産者」に選出
クレメンスのワイン造りは、畑で得られた個性やエネルギーをできる限りそのままボトルへ映し出すことを軸としています。醸造は自生酵母による発酵を基本とした低介入型で、過度な抽出や新樽の使用を避け、果実、酸、ミネラルの自然なバランスを重視しています。特にブラウフレンキッシュでは、力強さや濃密さを追求するのではなく、タンニンの質感や軽やかな飲み心地、冷涼感のある透明な果実味を大切にしています。また、共発酵や長期マセラシオン、スキンコンタクトといった実験的な手法も積極的に取り入れ、「Mash-Up」のような独創的なワインも生み出しています。
こうした試みは奇抜さを狙ったものではなく、土地や品種の新たな表現を探求するためのアプローチです。彼のワインには、アイゼンベルクらしい鉄分由来のミネラルと鮮やかな酸に加え、若い世代ならではの自由な感性と土地への深い理解が共存しています。
その実力は高く評価されており、2024年にはFalstaff誌が選ぶ「ブルゲンラント最優秀若手ワイン生産者」に選出されました。現在、オーストリアで最も注目を集める若手生産者の一人です。