ヴィーニンガー / Wieninger

Wieninger
世界唯一の「都市ワイン産地」ウィーンを世界地図に刻んだ先駆者——ゲミシュター・ザッツの復権とビオディナミが示す、フリッツ・ヴィーニンガーの半世紀の挑戦
ヴァイングート・ヴィーニンガーは、オーストリアの首都ウィーンのシュタマースドルフ地区に本拠を置く、100年以上の歴史を持つ家族経営のワイナリーです。ルーツは1945年以降にエドムント・シュタインバッツがシュタマースドルフにホイリゲ(ヴィーンの伝統的なワイン酒場)を築いたことに遡り、その娘がヴィーニンガー家と婚姻したことで経営が移り、以来「ヴァイングート・ヴィーニンガー」として続いています。決定的な転換をもたらしたのが1966年生まれのフリッツ・ヴィーニンガーで、1987年に醸造の指揮を執り始めました。クロスタノイブルクの醸造学プログラムを修了した母親(同プログラム初の女性修了生のひとり)のもとでワインに親しんで育ち、カリフォルニアで1年間の研修を経て帰国。当初はピノ・ノワールとシャルドネに情熱を注いでいましたが、ウィーン伝説の生産者フランツ・マイヤーに「ゲミシュター・ザッツを栽培し続けるべきだ」と促されたことが、ドメーヌの将来を変えました。
「私が始めた頃は、若いクレイジーなヴィジョンを持った人間だと思われていた。今やみんながゲミシュター・ザッツを造り、ウィーンはその産地を誇りに思っている」——フリッツのこの言葉が、1980年代後半から始まった「ニュー・ウィーン」ワイン運動を体現しています。彼は「ウィーン・ワイン」生産者協会(Wien Wein)の設立メンバー兼会長を務め、フレッド・ロイマーとともにビオディナミ生産者団体RESPEKTの共同代表にも就任。2013年ヴィンテージからゲミシュター・ザッツがDAC(産地固有ワイン)認定を受けたことにも貢献し、これはオーストリアで初めてワインのスタイルと産地が同時に規定されたという歴史的な出来事でした。2018年からは「ウィーン伝統的ワイン生産者協会」のメンバーとして、エルステ・ラーゲン(一級畑)の分類にも携わっています。
ドナウ河が隔てる二つのテロワール——ビザムベルクのロース土壌とヌスベルクの石灰岩が生む、ゲミシュター・ザッツの多彩な個性
ドメーヌは約65ヘクタールの畑をビザムベルク(ドナウ川北岸、ウィーン21区)とヌスベルク(ドナウ川南西、ウィーン19区)の二つの主要産地に分けて持ちます。ビザムベルクは乾燥して日当たりが良く、ロース(黄土)質の軽い砂質土壌がグリューナー・フェルトリナーに力強さとスパイス感をもたらします。一方、急斜面のヌスベルクは貝殻石灰岩と砂岩の上に粘土質が重なる痩せた土壌で、ゲミシュター・ザッツの真髄として「グランド・セレクト」などより複雑でミネラリーなスタイルが生まれます。すべての畑がビオディナミ認証を取得しており、化学合成農薬・除草剤・化学肥料を一切使用しない栽培を実践しています。ゲミシュター・ザッツはグリューナー・フェルトリナー、ヴェルシュリースリング、リースリング、ノイブルガー、ピノ・ブラン、ゲヴュルツトラミナーなど複数品種を同一畑で栽培・収穫・醸造するフィールドブレンドで、45カ国に輸出される旗艦スタイルとして世界的な評価を確立しています。