ピノ・ブラン / Pinot Blanc

Pinot Blanc

ピノ・ファミリーの静かな万能選手——ブルゴーニュで生まれアルザスとドイツで輝く、「有用だが興奮させない」白ブドウの真価

ピノ・ブラン(ドイツ語:ヴァイスブルグンダー、イタリア語:ピノ・ビアンコ)は、ピノ・ノワールの自然変異から生まれた白ブドウ品種です。ピノ・グリピノ・ノワールの変異から生まれ、ピノ・ブランはさらにそのピノ・グリの変異から生まれたと考えられており、三品種は遺伝的に極めて近い関係にあります。ブルゴーニュを原産とし中世には同地で栽培されていましたが、ブルゴーニュ公家によるシャルドネ偏重の政策とともにほぼ姿を消し、現在のブルゴーニュには極わずかな区画しか残っていません。ジャンシス・ロビンソンが「有用だが興奮させない(useful rather than exciting)」と評したこの品種は、アルザスドイツ、北イタリア(南チロル、フリウリ)、オーストリアを主要産地とし、世界栽培面積ではドイツが最大を誇ります。

アルザスではピノ・ブランが2021年時点で最も広く植えられた品種となっており、その60%がクレマン・ダルザスの発泡ワインに使用されています。ただしアルザスのピノ・ブランには特殊な事情があり、AOC規定上ではオーセロワという別品種がピノ・ブランとして表記することを許されているため、「ピノ・ブラン」ラベルのワインが実際には100%オーセロワであるケースも珍しくありません。一方で逆は認められず、オーセロワ単独ではピノ・ブランとは名乗れないという非対称な法律が混乱を生んでいます。ドイツではライン・ヘッセン、バーデン、プファルツを中心に5,000ヘクタール以上が植えられており、白品種の中でリースリングミュラー・トゥルガウ、グラウブルグンダーに次ぐ第4位を占めます。ブルゴーニュでは幻の存在となったこの品種に唯一最後まで付き合い続けた造り手として、アンリ・グーの変異ピノ・ブラン(グー・ピノ・ブラン)が知られています。

青りんごとアーモンド、産地によって変わる多彩な表情——シャンパーニュの脇役からフランコルタの主役まで

ピノ・ブランのワインは、青りんごや洋梨、柑橘のアロマに穏やかな酸とアーモンドのニュアンスが加わる、すっきりとしたドライスタイルが基本です。ステンレスタンクで醸造されたものはクリーンでフレッシュな印象を与え、樽熟成を経たものはクリーミーでナッツのような複雑さが加わります。産地によってスタイルの幅が大きく、モーゼルの急峻な片岩斜面からはミネラリーで軽快な表現が、バーデンや南チロルの温暖な産地からはより豊かでふくよかな表現が生まれます。オーストリアのブルゲンラント(特にゴルス周辺)ではノイジードル湖の影響による完熟果実と貴腐の可能性が、シュタイアーマルクではより引き締まったクリスプなスタイルが産地の個性を形成しています。イタリアのフランチャコルタではシャルドネピノ・ノワールとのブレンド素材として重要な役割を担い、北イタリアを代表するスパークリングワインの品質を支えています。タンニンが少なく酸は穏やかで食事に寄り添いやすいという特性から、幅広い料理とのペアリングに優れた万能な白ワインとして高い実用的価値を持ちます。