シノン / Chinon

Chinon

1937年AOC認定・ロワール最大の赤ワイン産地——ヴィエンヌ川両岸に広がる2,400haで、カベルネ・フランが凝灰岩・砂礫・粘土石灰岩の三つの顔を見せる

シノンは、ロワール川とヴィエンヌ川の合流点に広がる、トゥーレーヌ地区最大の赤ワインAOCです。1937年にAOCとして認定され、26のコミューンにまたがる約2,400haの畑に250以上の生産者が軒を連ねます。産地の中心をなす品種はカベルネ・フラン(地元では「ブルトン」とも呼ばれる)で、生産量の87〜90%を赤ワインが占め、ロゼが約8%、シュナン・ブランによる白ワインが2〜5%と、実質的にはカベルネ・フランの産地と言って差し支えありません。

シノンのテロワールは大きく三層に分かれます。河川沿いの砂礫・沖積土は果実味豊かで早飲みスタイルの軽快な赤を生み、丘陵斜面に広がるチュフォー(トゥロニアン凝灰岩)はミネラルと骨格を与え、台地上のフリント質粘土石灰岩はストラクチャーと複雑性を付与します。気候はロワール全体と比較して温暖・乾燥に傾き、カベルネ・フランの完熟を後押し。こうした地の利から、シノンはいち早く有機農法が普及した産地としても知られています。収量上限は55hl/haで、高品質志向の造り手は大幅に低い収量で栽培する例も珍しくありません。

ボードリーのラ・クロワ・ボワセとフィリップ・アリエのコトー・ド・ノワレ——砂礫と粘土石灰岩がカベルネ・フランに与える二つの表情を体現する、シノン頂点の二大自然派

シノンの実力を世界に知らしめた造り手として、まず挙がるのがドメーヌ・ベルナール・ボードリーです。1975年にベルナール・ボードリーがわずか2haから始め、現在は息子マチューとともに32haを管理。2006年にオーガニック認証を取得(実践はそれ以前から)し、レ・グランジュからラ・クロワ・ボワセまで5つのキュヴェを区画ごとに仕込み分けています。粘土石灰岩のコトーから生まれるラ・クロワ・ボワセは、最もストラクチャーと長熟ポテンシャルを持つシノンの傑作として評されます。野生酵母・手摘み・SO₂最小限の仕込みで、カベルネ・フランの真髄を引き出します。

もう一人の巨人、フィリップ・アリエも同じクラヴァン=レ=コトーに拠点を置き、17haを有機農法(無除草剤・無化学肥料、ビオディナミに準じた月齢農法)で管理します。樹齢70〜90年のヴィエイユ・ヴィーニュをコンクリートタンクで18ヶ月熟成した「ヴィエイユ・ヴィーニュ」と、南向きの粘土石灰岩区画からフレンチオーク熟成で生む「コトー・ド・ノワレ」が二本柱。コトー・ド・ノワレはボードリーのラ・クロワ・ボワセ、ラフォーのレ・ピカスとならび「シノン最高峰のカベルネ・フラン」に数えられ、ピーク到達まで10〜15年を要する長熟型です。スミレ・赤果実・スパイスが時間とともに溶け合う複雑さは、ロワール赤ワインの到達点を示しています。

メタディスクリプション:シノンは1937年AOC認定のロワール最大の赤ワイン産地。26コミューン・約2,400haでカベルネ・フランが凝灰岩・砂礫・粘土石灰岩の三層テロワールを表現。ベルナール・ボードリーやフィリップ・アリエら自然派の名手が世界的評価を受ける、ロワールを代表するアペラシオンです。