ラ・グランジュ・ド・ロンクル・シャルル / La Grange de L'oncle Charles

La Grange de L'oncle Charles
木工職人からビオディナミへ——馬とともに大地を耕す、アルザス自然派の新星ジェローム・フランソワ
フランス・アルザス地方の北部に位置するオストハイム村。この静かな地に、現在の自然派ワイン界において最も眩い光を放つ造り手の一人、ジェローム・フランソワが率いるドメーヌ「ラ・グランジュ・ド・ロンクル・シャルル」は存在します。もともと木工職人としての顔を持ち、アンティーク家具の修復に携わっていたジェロームは、素材が持つ本来の美しさを引き出すという職人としての感性を、ワイン造りという新たな芸術へと昇華させました。2014年の設立当初から彼が貫いているのは、近代的な機械や化学物質に頼ることなく、自然のサイクルと完全に共鳴する農業です。彼は、ブドウ畑を単なる生産の場ではなく、多様な動植物が共生する一つの生命体として捉えており、設立当初からビオディナミを実践し、土壌の健康を何よりも重視してきました。ジェロームのワインを一口含めば、そこには単なるブドウの果汁を超えた、アルザスの風土そのものが持つ力強い生命力と、職人としての妥協なき精神が宿っていることを確信できるはずです。
ラ・グランジュ・ド・ロンクル・シャルルを語る上で欠かすことができない光景は、トラクターの代わりに馬が畑を耕す姿です。ジェロームは重い機械が土壌を圧縮し微生物の活動を妨げてしまうことを強く懸念し、愛馬シルスとクイントとともに畑へ入ります。この馬耕による農法は土壌をふっくらと柔らかく保ち、ブドウの根が地中深くへと伸びるのを助けるための極めて合理的な選択です。足元の土が呼吸を始めることで目に見えない微生物の働きが活発になり、結果としてテロワールの個性がより鮮明にブドウの実へと伝わります。また畑の周囲に果樹を植え、羊を放牧することで畑の中に自律的な生態系を構築しています。ジェロームの活動範囲はオストハイムだけにとどまらず、リボーヴィレやゼレンベルクといったアルザス屈指の名醸地にも広がり、現在では約8ヘクタールの畑を管理しています。化学肥料や農薬を一切使用しないことはもちろんのこと、銅や硫黄の使用も最小限に抑え、自然の免疫力を引き出すことに注力しています。
コンプランタシオンが描く多層的なテロワール——「ミル・リュー」が体現する、品種の壁を取り払った混植混醸の美学
アルザスワインの伝統的な美学のひとつに、異なるブドウ品種を同じ畑に植え同時に収穫・醸造する「コンプランタシオン(混植混醸)」があります。ジェローム・フランソワはこの古き良き伝統を現代に蘇らせ、ラ・グランジュ・ド・ロンクル・シャルルのワインにおける中核的な手法として採用しています。通常アルザスではリースリングやゲヴュルツトラミネールといった単一品種の個性を強調することが一般的ですが、ジェロームはあえて品種の壁を取り払い、その「土地」が持つエネルギーを表現することに重きを置きます。看板キュヴェ「ミル・リュー(Mille Lieux)」はまさにこの考えを体現しており、複数の品種が混ざり合うことで単一品種では到達し得ない多層的で調和のとれた味わいを生み出しています。畑ではリースリング、ピノ・グリ、ピノ・ブラン、シルヴァーネル、ミュスカ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・ノワールまでもが同じ区画で共生し、同じタイミングで収穫されます。この手法により早熟な品種の持つ豊かな糖度と晩熟な品種が保つ鋭い酸が見事に補完し合い、ワインに驚くべき立体感と生命感をもたらします。