ツヴァイゲルト / zweigelt

Zweigelt

1922年クロスタノイブルクの実験室で生まれた、オーストリア最大の赤品種——聖ローランとブラウフレンキッシュの長所を引き継ぐ、現代的な交配の傑作

ツヴァイゲルト(正式名称:ブラウアー・ツヴァイゲルト)は、オーストリアで最も広く栽培される赤ブドウ品種で、全ブドウ栽培面積の約14%を占めます。1921年、クロスタノイブルク醸造研究所長に就任したフリードリヒ(フリッツ)・ツヴァイゲルト博士(1888〜1964年)が病害耐性と収量向上を目的に交配実験を開始し、1922年にサン・ローランとブラウフレンキッシュの交配から「クロスタノイブルク71号」として誕生しました。育成者はこの品種を当初「ロートブルガー(Rotburger)」と命名しましたが、同時期にドイツのガイゼンハイムで生まれた別品種「ロートベルガー(Rotberger)」との混同が続いたため、1970年代に影響力あるオーストリアのワイン生産者レンツ・モーザーの提唱によって育成者の名を冠した「ツヴァイゲルト」へと改名されました。第二次大戦後、モーザーが独自の高幹仕立てシステムを普及させる過程でこの品種を積極的に推薦・植栽したことがオーストリア全土への普及を加速させました。なお育成者フリッツ・ツヴァイゲルトは後にナチス党員であったことが知られており、その歴史的評価についてはオーストリアのワイン界でも議論が続いています。

交配の目的はサン・ローランの弱点(早芽による晩霜被害への脆弱性)とブラウフレンキッシュの弱点(晩熟による秋雨リスク)を同時に克服することにありました。ツヴァイゲルトはサン・ローランより遅く芽吹き、ブラウフレンキッシュより早く熟すことでこの問題を解決し、さらに病害への耐性も高まりました。現在ブルゲンラント(特にノイジードル湖畔)やニーダーエスターライヒのカルヌントゥム、クレムスタール、カンプタールをはじめオーストリアの全ワイン産地で栽培されており、石灰質の多い土壌を除くほぼすべての土壌に適応します。

サクランボとスパイス、親譲りの二つの顔——軽快なデイリーからオーク熟成の複雑なキュヴェまで、ツヴァイゲルトの多彩な表現

ツヴァイゲルトのワインは、深い赤紫色の外観を持ちながら口当たりは意外なほど軽やかです。サクランボやラズベリーなどの赤系果実のアロマにスミレの花のニュアンスが加わり、ピノ・ノワールに通じる絹のような質感を示します(サン・ローラン譲り)。これにブラウフレンキッシュ譲りの黒胡椒のスパイス感としっかりした酸が加わることで、軽快ながら個性のある構造を形成します。タンニンは穏やかでアルコール度数も控えめな傾向があり、軽くチルドして飲める親しみやすさがあります。一方で優れた産地のキュヴェは新樽熟成によってより複雑な表現を示し、ブルゲンラントのトップ生産者が手がけるものは10年前後の熟成にも対応します。ブラウフレンキッシュとの親子ブレンドや、カベルネ・ソーヴィニヨンメルローとのボルドースタイルのブレンドにも使われており、オーストリアの赤ワインの多様性を支える屋台骨となっています。