【完全版】 ワイン評価誌・評論家ガイド|RP・WS・JS・Vinous・JM・JMIB・AM・RJ・MB 9媒体の特徴・得意産地・スコアの読み方を徹底解説

ワインのラベルや商品ページに記載された「RP95」「WS98」「JS97」——これらは世界的なワイン評論家・評価誌が付けたスコアを示す略称です。しかしスコアは誰が付けたかによって意味が大きく異なります。ボルドーに強い評論家、ブルゴーニュを得意とする専門家、シャンパーニュの権威——それぞれの評論家がどの産地・スタイルに精通しているかを知ることが、スコアを正しく読むための第一歩です。本記事では9つの主要媒体を、歴史・評価傾向・得意産地の観点から解説します。
📋 この記事の目次
100点満点スコアとは何か
ワインの100点満点評価は、ロバート・パーカー・ジュニアが1978年に創刊した「The Wine Advocate」で初めて体系的に採用した採点システムです。それ以前のワイン評価は文章での記述が中心でしたが、アメリカの学校成績表になじみ深い100点満点形式を採用することで、消費者が直感的にワインの品質を比較できるようになりました。この革新は世界のワイン市場を大きく変え、現在ではほとんどの主要評価誌が100点満点(または類似)のスコアを採用しています。
98〜100点:傑作。一生に一度の体験レベル
95〜97点:卓越。強くおすすめできる最高クラス
90〜94点:優秀。十分に高品質で購入価値あり
85〜89点:良好。日常飲みとして十分
80〜84点:平均的。問題はないが特徴に乏しい
80点未満:推奨されない
スコアはあくまで「その評論家が、その時点で試飲したワインの評価」です。評論家によって得意産地・好みのスタイルが異なるため、同じワインでも評論家によって5〜10点の差が出ることは珍しくありません。また、スコアは試飲時の状態(飲み頃かどうか)にも左右されます。複数の評論家のスコアを参照することが、より正確なワイン選びにつながります。
RP|Wine Advocate(ロバート・パーカー)
創刊:1978年(米メリーランド州)/形式:デジタル購読媒体(月29ドル~)/年間評価本数:約12,000本以上
RP アメリカ・メリーランド州出身。弁護士出身という異色のキャリアから転身し、1978年に広告収入に頼らない独立系ニュースレター「The Wine Advocate」を創刊。消費者の代弁者として絶大な信頼を獲得しました。100点満点スコアの世界的普及に最も貢献した人物で、その評価ひとつでワインの市場価格が大きく動くことから「ワイン界の帝王」と称されてきました。2019年に引退。
パーカーを語る上で欠かせないのが「1982年ボルドーの予言」という有名な逸話です。当時のワイン業界の大多数が1982年ヴィンテージを「過熟で凡庸」と評する中、パーカーただひとり「20世紀最高のボルドー」と断言しました。その後1982年が世紀のヴィンテージと認められると、パーカーの名声は一夜にして世界規模となりました。ボルドー左岸のポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴーの格付けシャトーへの信奉は特に熱く、「パーカライゼーション」(パーカーの好む濃厚・凝縮スタイルに生産者が傾倒する現象)という言葉が生まれるほど業界への影響力は絶大でした。
◎ ボルドー左岸◎ カリフォルニア○ ローヌ
オックスフォード大学で歴史学の博士号を取得し、在学中にオックスフォード大学ワインサークルの代表を務めた異色のキャリアの持ち主。2018年にWine Advocateに加わり、2024年に編集長に就任。ボルドー・ブルゴーニュ・シャンパーニュというフランスの最重要3産地を担当し、現在最も注目を集めるWine Advocate評論家として「世界で最も影響力ある評論家になり得る」とも言われています。
◎ ボルドー◎ ブルゴーニュ◎ シャンパーニュ
ローマ在住のイタリアワイン専門評論家。2003年にWine Enthusiastでイタリア担当として経歴を積み、2013年にパーカーに引き抜かれてWine Advocateのイタリアチーフとなるためアントニオ・ガッローニの後任として就任。Vinitaly(イタリア国際ワイン見本市)でベスト・ジャーナリスト賞を3度受賞した唯一の評論家です。イタリアワイン(特にトスカーナ、ピエモンテ)の評価に最も信頼が置かれます。
◎ イタリア全般◎ トスカーナ◎ ピエモンテ
2024年時点のWine Advocateチームは計9名体制です。ルイス・グティエレス(スペイン・リオハ担当)、ステファン・ラインハート(ドイツ担当)、エリン・ブルックス(オレゴン・ソノマ担当)、マーク・スクワイアズ(ポルトガル・イスラエルほか担当)などが各産地を専門に担当しています。
RPスコアが特に有効なWine Libraryの商品カテゴリー
- ▶ シャトー・マルゴー(メドック第1級)
- ▶ シャトー・シュヴァル・ブラン(サン・テミリオン最高峰)
- ▶ シャトー・ペトリュス(ポムロール)
- ▶ Wine Library イタリアワイン一覧
- ▶ Wine Library ボルドーワイン一覧
WS|Wine Spectator
創刊:1976年(米サンディエゴ→1979年よりNY)/形式:雑誌+デジタル(世界最大部数)/年間評価本数:15,000本以上(ブラインドテイスティング)
WS 「Wine Spectator(ワイン・スペクテイター)」は1976年にアメリカで創刊された世界最大部数のワイン専門誌です。個人ではなく複数の専門スタッフによるチーム評価体制を採用しており、毎年15,000本以上のワインをブラインドテイスティングで評価します。「Top 100」として年末に発表するベストワインランキングは世界中のワイン業界が注目する一大イベントです。
得意産地・信頼度:
◎ ボルドー◎ カリフォルニア○ イタリア○ スペイン
複数の担当評論家が地域ごとに特化しているため、幅広い産地をカバーしています。特にボルドーのポイヤック・サン・ジュリアン・マルゴーといった左岸の格付けシャトー評価と、カリフォルニアに強く、RPと並んでボルドーワイン購入の際の信頼できる指標となります。毎年末の「Top 100」発表は業界全体が注目するイベントで、選ばれたワインは瞬く間に市場から姿を消すこともあります。ただしWSはやや消費者向けの「飲みやすさ・即時的な果実味」を重視する傾向があるとも言われており、RPより若干スコアが甘い印象を持つ評論家も多いです。
JS|James Suckling
独立:2010年(jamessuckling.com)/形式:デジタル購読媒体/年間評価本数:25,000本以上
JS ジェームズ・サックリングは、アメリカ出身のワイン評論家で、長年Wine Spectatorのヨーロッパ代表として活躍した後、2010年に独立して自身のウェブサイト「jamessuckling.com」を立ち上げました。現在はデジタルメディアとして世界で最も影響力のある評論家のひとりです。年間最大25,000本以上のワインを試飲・評価する精力的な活動量で知られており、特にイタリアワインの評価ではアジア市場を中心に圧倒的な影響力を持ちます。
得意産地・信頼度:
◎ ボルドー◎ イタリア(トスカーナ)○ ポルトガル○ 世界各地
WSでのボルドー担当経験からボルドー評価への信頼は高いですが、全般的にスコアがやや高め(いわゆる「インフレ傾向」)との指摘もあり、年間25,000本という評価本数の多さから「ひとつのスコアへの重みが薄まっている」と見る向きもあります。ただしアジア市場での認知度は圧倒的で、特にイタリアのトスカーナ(バローロ・バルバレスコ・スーパータスカン)ではJSスコアが市場価格に直接影響するほどの影響力を持ちます。また、ポルトガルワインの国際的な再評価にも大きく貢献した評論家として知られています。
Vinous|アントニオ・ガッローニ(元IWC)
創設:2013年(2014年にIWC吸収合併)/形式:デジタル購読媒体/旧略称:IWC(International Wine Cellar)
Vinous アントニオ・ガッローニはニューヨーク出身のワイン評論家です。2004年にMITの大学院在学中にイタリアワイン専門誌「Piedmont Report」を創刊し、バローロやバルバレスコなどピエモンテの偉大なワインを英語圏に紹介した先駆者です。2006年にパーカーに招かれWine Advocateに参加し、イタリア・カリフォルニア・ブルゴーニュ・シャンパーニュを担当した後、2013年に独立。翌2014年にはスティーヴン・タンザーが主宰した「International Wine Cellar(IWC)」を吸収合併しており、スコアは「Vinous」として引き継がれています。
◎ イタリア◎ カリフォルニア◎ シャンパーニュ○ ブルゴーニュ
イギリス出身。2006年にWine Advocateに参加してボルドーとブルゴーニュを担当し、2012年には著書「Pomerol(ポムロール)」でAndré Simon Award(イギリス最高峰のワイン書籍賞)を受賞。2017年にVinousに移籍し、現在もボルドー・ブルゴーニュのシニアエディターとして活躍中。特にボルドー右岸——ポムロールのペトリュスやサン・テミリオンのシュヴァル・ブランなど——への評価の精度が高く、ブルゴーニュではヴォーヌ・ロマネ・ジュヴレ・シャンベルタン・シャンボール・ミュジニーなどの村名アペラシオンを丁寧に評価することで知られています。
◎ ボルドー右岸(ポムロール)◎ ブルゴーニュ○ ボルドー左岸
JM|Jancis Robinson
jancisrobinson.com 開設:2000年代/採点方式:20点満点(18点以上が優秀の目安)/著書多数
JM ジャンシス・ロビンソンはイギリス出身の世界的なワイン評論家・著述家です。1984年にマスター・オブ・ワイン(MW)の資格を取得した最初のフリーランス・ジャーナリストとして知られており、著書「Oxford Companion to Wine(オックスフォード・ワイン大全)」はワイン業界のバイブルとも称されます。2003年にはエリザベス女王よりOBE(大英帝国勲章)を授与されましたが、さらに特筆すべきはバッキンガム宮殿の王室御用達ワインリストの管理を長年担ってきたという事実です。ロビンソンが「女王陛下のセラーに值する」と判断したワインは、産地・品種を問わず世界中から集められており、その幅広い知識の深さを象徴するエピソードとして知られています。現在は自身のウェブサイト「jancisrobinson.com」でほぼすべてのワイン産地を網羅する膨大な評価を発信しています。
得意産地・信頼度:
◎ ボルドー◎ ブルゴーニュ◎ ドイツ◎ 世界全般
特定の産地への偏りが最も少ない評論家のひとりで、産地・品種を問わないバランスの良い評価で信頼されています。採点は20点満点(18点以上が「優秀」の目安)のため、他誌の100点スコアと単純比較する際は注意が必要です。ボルドーのポイヤック・マルゴーからブルゴーニュのヴォーヌ・ロマネまで、あらゆる産地を公平に評価するスタイルが特徴です。ドイツリースリングやアルザスなど他の評論家が手薄にしがちな産地への造詣が特に深い点でも業界から尊敬されています。
JMIB|Jasper Morris Inside Burgundy
著書「Inside Burgundy」出版:2010年/ブルゴーニュ専門の購読型評価媒体
JMIB ジャスパー・モリスはイギリス出身のマスター・オブ・ワイン(MW)で、「Inside Burgundy(インサイド・ブルゴーニュ)」の著者として知られるブルゴーニュ専門の評論家です。「Inside Burgundy」は2010年に刊行されたブルゴーニュに関する最も包括的かつ詳細な書籍のひとつで、コート・ド・ニュイからコート・ド・ボーヌ、シャブリ、ボジョレーに至るまでブルゴーニュ全域を網羅したバイブル的存在です。長年にわたって英国老舗ワイン商ベリー・ブラザーズ&ラッド(BB&R)のブルゴーニュバイヤーを務め、現地生産者との深いネットワークを持つことでも知られています。
得意産地・信頼度:
◎ ブルゴーニュ全般◎ コート・ド・ニュイ◎ コート・ド・ボーヌ
ブルゴーニュ評価においては世界最高峰の権威のひとりです。JMIBのスコアが付いたブルゴーニュワインは、コレクターにとって特に信頼できる品質指標となります。コート・ド・ニュイではジュヴレ・シャンベルタン・ヴォーヌ・ロマネ・シャンボール・ミュジニー・ニュイ・サン・ジョルジュ・モレ・サン・ドニを、コート・ド・ボーヌではムルソー・ピュリニー・モンラッシェなどの白ワイン産地まで広くカバーしています。
AM|Allen Meadows(Burghound)
Burghound.com 創設:2000年/形式:購読型ニュースレター/ブルゴーニュ特化
AM アレン・メドウズはアメリカ出身のワイン評論家で、自身が運営するウェブサイト「Burghound.com(バーグハウンド)」の運営者として知られるブルゴーニュ専門家です。元はウォール街の金融業界に従事していましたが、ブルゴーニュへの情熱が高じて評論家に転身した異色の経歴の持ち主です。その金融マン的な分析思考はワイン評価にも活かされており、Burghoundのテイスティングノートは他の媒体と比べて論理的・構造的と評されることが多いです。著書「The Pearl of the Côte(コート・ドールの真珠)」はブルゴーニュのモノグラフとして高く評価されています。
得意産地・信頼度:
◎ ブルゴーニュ(コート・ドール)◎ ピノ・ノワール◎ シャルドネ
ブルゴーニュ、とりわけコート・ドール(コート・ド・ニュイ+コート・ド・ボーヌ)の評価においてはJMIBと並ぶ最高峰の専門家です。AMスコアは他誌と比べて厳格で、JSやWSで95点以上が当たり前のワインがAMでは90〜92点、ということも珍しくありません。逆に言えばAMが95点以上を付けたブルゴーニュは本物の傑作とコレクター間では見なされており、ヴォーヌ・ロマネやジュヴレ・シャンベルタンのグラン・クリュクラスに高スコアが付いた際の市場影響力は絶大です。
RJ|Richard Juhlin
著書「A Scent of Champagne」ほか多数/シャンパーニュ試飲本数:10,000本以上
RJ リシャール・ユーランはスウェーデン出身のシャンパーニュ専門評論家で、「シャンパーニュ界のパーカー」とも称されます。これまでに試飲したシャンパーニュの本数は10,000本以上にのぼりますが、特に知られるのが2011年の世界シャンパン・ブラインドテイスティング選手権での逸話です。会場で出された250本超のシャンパーニュをブラインドで試飲し、なんとほぼ正確に銘柄を当て続けて世界1位を獲得。その記憶力と味覚の精度は「人間の域を超えている」とワイン界で語り草になっています。著書「A Scent of Champagne(シャンパーニュの香り)」はモエ・エ・シャンドンのDom Pérignon(ドン・ペリニョン)からクリュッグのグランド・キュヴェまでプレスティージュ・キュヴェの評価基準を示した決定版として知られています。
得意産地・信頼度:
◎ シャンパーニュ(全般)◎ RM(レコルタン・マニピュラン)◎ プレスティージュ・キュヴェ
シャンパーニュの評価においては世界で最も権威ある評論家のひとりです。大手メゾン(モエ・エ・シャンドン、クリュッグ、ルイ・ロデレール、テタンジェ、サロンなど)から小規模RM(レコルタン・マニピュラン)まで幅広くカバーしており、RJスコアが付いたシャンパーニュは世界中の愛好家から注目されます。特にモンターニュ・ド・ランスやコート・デ・ブランの希少RMシャンパーニュへの高い評価は、知る人ぞ知る世界として多くのコレクターが追い求めています。
MB|Michel Broadbent
1927〜2020年/クリスティーズ・ワイン部門長を長年歴任/MW取得者
MB マイケル・ブロードベント(1927〜2020)はイギリス出身のワイン評論家で、クリスティーズのワイン部門を長年率いたオークションのパイオニアです。MWの資格を持ち、ワイン業界において最も尊敬を集めた評論家のひとりとして知られています。著書「Michael Broadbent's Wine Vintages(ヴィンテージ・ワイン)」は古酒・熟成ワインの評価における世界標準として今も参照される名著です。ブロードベントにまつわる有名な逸話として、「ジェファーソン・ボトル事件」があります。アメリカ建国の父トーマス・ジェファーソンが所有していたとされる18世紀のシャトー・ラフィット・ロートシルドの古酒がクリスティーズオークションに出品された際、ブロードベントはその真贋を鑑定・認定しました。しかし後にこのボトルが偽造品である疑惑が浮上し、ワイン史上最大の偽造スキャンダルのひとつとして語り継がれています(なおブロードベント自身は真贋鑑定に誠実に取り組んでいたとされています)。2020年に92歳で逝去しましたが、その膨大な試飲記録は現在もワイン業界の貴重な資料として活用されています。
得意産地・信頼度:
◎ ボルドー(熟成ワイン)◎ ブルゴーニュ(熟成ワイン)◎ 古酒・バックヴィンテージ
特に数十年にわたる熟成ワインの評価において他の追随を許さない権威でした。1800年代のボルドー(シャトー・ラフィット・ロートシルド、シャトー・ラトゥール、シャトー・ディケムなど)から戦前のブルゴーニュまで、他の評論家が試飲する機会すらないような歴史的なワインを評価した記録は現在も唯一無二の資料です。MBのスコアは現役商品よりもバックヴィンテージワインの評価として特に信頼性が高く、稀少な古酒を購入する際には必ず参照したい評価です。
産地別・評論家の信頼度早見表とまとめ
| 産地 | 最も信頼できる評論家 | 次点 |
|---|---|---|
| ボルドー | RP(Wine Advocate) | WS、JM、JS |
| ブルゴーニュ | AM(Burghound)、JMIB | Vinous、JM |
| シャンパーニュ | RJ(Richard Juhlin) | JM、WS |
| イタリア | JS、Vinous | WS、JM |
| カリフォルニア | RP、Vinous | WS、JS |
| 熟成ワイン・古酒 | MB(Michel Broadbent) | JM、RP |
| 世界全般・バランス重視 | JM(Jancis Robinson) | WS、Vinous |
本記事で紹介した早見表はあくまでも傾向です。評論家にもそれぞれ個人的な好みやスタイルがあり、同じワインでも試飲のタイミング・温度・グラス・体調によって評価が変わることも珍しくありません。たとえばボルドーであればRPとWSが参考になることが多いですが、それはあくまで「その評論家がその産地を多く評価してきた」という傾向であって、絶対的な正解ではありません。
スコアが高いワインが自分の好みに合うとは限りませんし、スコアの低いワインが飲む場面や料理との組み合わせによって最高の一本になることもあります。複数の評論家のスコアを横断的に参照しつつ、「どの評論家の好みが自分に近いか」を探していくこと自体がワインの楽しみ方のひとつです。
Wine Libraryの商品ページに記載されている評価スコアも、ぜひそのような「傾向を知るためのヒント」として活用してください。