ヴァレ・ド・ラ・マルヌ / Vallée de la Marne

Vallée de la Marne

マルヌ川が刻んだ谷間の産地——ムニエが語る、シャンパーニュのもうひとつの素顔

ヴァレ・ド・ラ・マルヌは、エペルネを起点にマルヌ川沿いを東西に延びる、シャンパーニュ地方でも際立って個性的な産地です。川に沿って緩やかに連なる南向き・南西向きの斜面は日照に恵まれ、三つの主要地区のなかでも比較的温暖な気候を持ちます。その環境がムニエという品種を育む土台となっており、ヴァレ・ド・ラ・マルヌはムニエの栽培比率がシャンパーニュ地方でもっとも高い産地として知られています。

土壌はマルヌ川の堆積作用による粘土質や砂質が主体で、チョーク層の割合はコート・デ・ブランやモンターニュ・ド・ランスと比べると少なめです。この重めの土壌構成がムニエの生育に適しており、果実味豊かでふくよかなスタイルのシャンパーニュを生む基盤となっています。アイ、トゥール・シュル・マルヌのグランクリュをはじめとして、ディジー、キュミエールなど歴史ある村が川沿いに点在し、それぞれに異なる地質的背景を持っています。

「ブレンドの縁の下」から主役へ——ムニエ再評価の震源地

長らくアッサンブラージュの補完的役割を担うとされてきたムニエですが、近年はその個性を前面に押し出したシングル品種・シングルヴィラージュのキュヴェが注目を集めています。その動きを牽引しているのが、まさにヴァレ・ド・ラ・マルヌの造り手たちです。特にキュミエール村はムニエの銘醸地として評価が高く、このアペラシオンから生まれるシャンパーニュは、他産地には出しにくい丸みと果実の豊かさを備えています。大手メゾンのブレンド素材としての役割と、レコルタンによる産地表現の両面から、今もっとも注目すべきシャンパーニュの産地のひとつです。