ブルゴーニュワインの格付けをわかりやすく解説|4段階の階層構造
ブルゴーニュワイン格付けわかりやすくグラン・クリュクリマ
ブルゴーニュワインの格付けは、複雑だと言われます。しかし構造そのものはたった4段階しかありません。複雑に見えるのは、ラベルの書き方が階層ごとに変わるからです。
結論からわかりやすく言います。ブルゴーニュの格付けは「ラベルに書かれた地名の範囲が狭いほど、格が上がる」——これだけです。フランス全土を指す名前が最下位、ひとつの畑の名前が最上位。ピラミッドを上るほど、産地の範囲が狭くなっていきます。
この記事では、4段階の格付けをラベルの実例つきで解説し、さらに「格付けが実力と一致しない例外」まで踏み込みます。ラベルを見て格付けを判別できるようになることが、この記事のゴールです。
まず全体像です。下から上へ、範囲が狭くなるほど格が上がります。
階層第1階層(最上位)
名称特級畑(グラン・クリュ)
生産量の目安約1%
範囲ひとつの特定の畑
価格帯の目安数万円〜数百万円
階層第2階層
名称一級畑(プルミエ・クリュ)
生産量の目安約10%
範囲村内の優れた特定区画
価格帯の目安1万円〜十数万円
階層第3階層
名称村名(ヴィラージュ)
生産量の目安約36%
範囲ひとつの村
価格帯の目安5,000円〜2万円
階層第4階層(基礎)
名称地方名(レジョナル)
生産量の目安約52%
範囲ブルゴーニュ地方全域、または広域
価格帯の目安2,000円〜6,000円
ここが一番わかりやすいポイント
特級畑はブルゴーニュ全生産量のわずか1%。逆に、半分以上は地方名クラスです。「ブルゴーニュ=高い」というイメージがありますが、実際に流通している大半は地方名・村名クラスで、価格も現実的な範囲に収まります。
ブルゴーニュの格付けをわかりやすく理解する鍵は、「ラベルに書かれた地名が示す範囲の広さ」です。
ラベルの地名Bourgogne(ブルゴーニュ)
示す範囲ブルゴーニュ地方全域(数百km²)
格付け地方名
ラベルの地名Gevrey-Chambertin(ジュヴレ・シャンベルタン)
示す範囲ジュヴレ・シャンベルタン村(約400ha)
格付け村名
ラベルの地名Gevrey-Chambertin 1er Cru Les Cazetiers
示す範囲村内のカズティエという畑(約9ha)
格付け一級畑
ラベルの地名Chambertin(シャンベルタン)
示す範囲シャンベルタンという特定の畑(約13ha)
格付け特級畑
注目してほしいのは最下段です。特級畑は村名すら書きません。畑の名前だけで通用する——これが特級の証です。「Chambertin」とだけ書かれていれば、それは村名ワインではなく特級畑です。
ブルゴーニュワインの格付け第4階層|地方名(レジョナル)
ブルゴーニュ地方全域、または広域のブドウから造られる、格付けの基礎となるカテゴリです。生産量の約半分を占めます。
AOC名Bourgogne Rouge/Blanc
内容ブルゴーニュ地方全域。ピノ・ノワールまたはシャルドネ。もっとも基本的なAOC
AOC名Bourgogne Aligoté
内容アリゴテ種から造られる白。近年評価が急上昇中
AOC名Bourgogne Passe-Tout-Grains
内容ピノ・ノワールとガメイのブレンド(ピノ30%以上)。伝統的な日常ワイン
AOC名Coteaux Bourguignons
内容2011年新設の広域AOC。ボージョレを含む広い範囲をカバー
AOC名Crémant de Bourgogne
内容瓶内二次発酵のスパークリング
AOC名Bourgogne Côte d'Or
内容2017年新設。コート・ドールのブドウのみを使用する、地方名の中でも上位の表記
AOC名Bourgogne Hautes-Côtes de Nuits/de Beaune
内容コート・ドールの丘の上部(標高400m前後)。近年、温暖化で評価が上がっている
地方名クラスの狙い方
地方名でも、優れた造り手がコート・ドールの畑から造ったものは、村名クラスに匹敵します。特に注目すべきは「Bourgogne Côte d'Or」表記。2017年に新設されたこのAOCは、コート・ドールのブドウ100%を保証するため、通常の「Bourgogne」より一段上の内容を期待できます。
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ブルゴーニュワインの格付け第3階層|村名(ヴィラージュ)
ひとつの村(コミューン)の範囲で造られるワインです。ブルゴーニュには約44の村名AOCがあります。
ここからが、ブルゴーニュの「土地の違い」が味に出はじめる領域です。同じピノ・ノワール、同じ村名クラスでも、ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーでは別物になります。
地区コート・ド・ニュイ
主な村名AOCマルサネ、フィサン、ジュヴレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニー、ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュ
地区コート・ド・ボーヌ
主な村名AOCラドワ・セリニー、アロース・コルトン、ペルナン・ヴェルジュレス、サヴィニー・レ・ボーヌ、ボーヌ、ポマール、ヴォルネイ、ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェ、サン・トーバン、サントネイ、マランジュ
地区コート・シャロネーズ
主な村名AOCブーズロン、リュリー、メルキュレ、ジヴリ、モンタニー
地区マコネー
主な村名AOCプイィ・フュイッセ、サン・ヴェラン、ヴィレ・クレッセ、プイィ・ヴァンゼル
地区シャブリ/ヨンヌ
主な村名AOCシャブリ、プティ・シャブリ、イランシー、サン・ブリ
村名の「二重名称」のからくり
「ジュヴレ・シャンベルタン」「シャサーニュ・モンラッシェ」「ヴォーヌ・ロマネ」——これらの後半部分は、村内の有名な特級畑の名前です。19世紀に村が有名畑の名を村名に付け加えて改名したもの。
つまり「Gevrey-Chambertin」は村名クラス、「Chambertin」だけなら特級。ハイフンでつながっていれば村名、畑名単独なら特級——この見分け方は非常に実用的です。
▶ ジュヴレ・シャンベルタンのワインを見る▶ ムルソーのワインを見る▶ ヴォルネイのワインを見る
ブルゴーニュワインの格付け第2階層|一級畑(プルミエ・クリュ)
村内で特に優れた区画に与えられる格付けです。ブルゴーニュ全体で約640の一級畑が存在します。
ラベル表記の2パターン
表記村名 + 1er Cru + 畑名
意味その一級畑単独のブドウから造られたワイン
例Volnay 1er Cru Les Caillerets
表記村名 + 1er Cru(畑名なし)
意味村内の複数の一級畑をブレンドしたワイン
例Volnay 1er Cru
畑名がない「1er Cru」だけの表記は、格下という意味ではありません。複数の一級畑を持つ造り手が、それぞれ少量ずつをブレンドして一本にまとめたもの。造り手の一級畑の平均像が味わえる、合理的な選択肢です。
一級畑にも実力差がある
640もある一級畑の実力は均一ではありません。特級畑に隣接する一級畑は、しばしば特級に迫る内容を持ちます。
村ムルソー
特級級と評される一級畑レ・ペリエール、レ・ジュヌヴリエール、レ・シャルム
理由ムルソーに特級畑は存在しないが、これらは実力として特級相当と広く認められている
村ヴォーヌ・ロマネ
特級級と評される一級畑クロ・パラントゥー、オー・マルコンソール
理由ロマネ・コンティやラ・ターシュに隣接。価格も特級級
村シャンボール・ミュジニー
特級級と評される一級畑レ・ザムルーズ
理由ミュジニーに隣接。特級より高値がつくこともある
村ヴォルネイ
特級級と評される一級畑レ・カイユレ、クロ・デ・シェーヌ
理由ヴォルネイに特級はないが、この2つは別格
村ニュイ・サン・ジョルジュ
特級級と評される一級畑レ・サン・ジョルジュ
理由特級昇格の申請が行われた歴史を持つ
▶ シャンボール・ミュジニーのワインを見る▶ ヴォーヌ・ロマネのワインを見る▶ ニュイ・サン・ジョルジュのワインを見る
ブルゴーニュワインの格付け第1階層|特級畑(グラン・クリュ)
ブルゴーニュの頂点。それぞれの畑が独立したAOCとして認められています。つまり「シャンベルタン」はAOC名そのものです。
コート・ドールには33の特級畑があり、加えてシャブリ・グラン・クリュが1AOC(7つの気候名を持つ)存在します。
コート・ド・ニュイの特級畑(赤)
村ジュヴレ・シャンベルタン
特級畑シャンベルタン、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ、シャペル・シャンベルタン、シャルム・シャンベルタン、グリオット・シャンベルタン、ラトリシエール・シャンベルタン、マジ・シャンベルタン、マゾワイエール・シャンベルタン、リュショット・シャンベルタン
村モレ・サン・ドニ
特級畑クロ・ド・タール、クロ・ド・ラ・ロシュ、クロ・サン・ドニ、クロ・デ・ランブレイ、ボンヌ・マール(一部)
村シャンボール・ミュジニー
特級畑ミュジニー、ボンヌ・マール(一部)
村フラジェ・エシェゾー
特級畑エシェゾー、グラン・エシェゾー
村ヴォーヌ・ロマネ
特級畑ロマネ・コンティ、ラ・ターシュ、リシュブール、ロマネ・サン・ヴィヴァン、ラ・ロマネ、ラ・グランド・リュ
コート・ド・ボーヌの特級畑
畑コルトン
色赤(白も可)
所在アロース・コルトン、ラドワ、ペルナン・ヴェルジュレスにまたがる。コート・ド・ボーヌ唯一の赤の特級
畑コルトン・シャルルマーニュ
色白
所在同上。白の最高峰の一つ
畑シャルルマーニュ
色白
所在ほぼ使用されない表記
畑モンラッシェ
色白
所在ピュリニーとシャサーニュにまたがる。世界最高の辛口白とされる
畑シュヴァリエ・モンラッシェ
色白
所在ピュリニー。モンラッシェの上部斜面
畑バタール・モンラッシェ
色白
所在ピュリニーとシャサーニュにまたがる
畑ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェ
色白
所在ピュリニー
畑クリオ・バタール・モンラッシェ
色白
所在シャサーニュ。約1.6haと極小
「モンラッシェ」という名が示すもの
ピュリニー・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェの間に、モンラッシェという特級畑がまたがっています。両村が19世紀にこの偉大な畑の名を自らの村名に付け加えたため、現在の二重名称が生まれました。ジュヴレとシャンベルタンの関係とまったく同じ構造です。
▶ ピュリニー・モンラッシェのワインを見る▶ シャサーニュ・モンラッシェのワインを見る▶ アロース・コルトンのワインを見る
ブルゴーニュワインのラベルの読み方——実例で判別する
ここまでの内容を、ラベル表記の実例で確認します。
ラベル表記Bourgogne Pinot Noir
格付け地方名
判別の根拠「Bourgogne」という地方名のみ
ラベル表記Bourgogne Côte d'Or
格付け地方名(上位)
判別の根拠コート・ドール産を保証する2017年新設AOC
ラベル表記Savigny-lès-Beaune
格付け村名
判別の根拠村名のみで畑名・1er Cruの表記なし
ラベル表記Beaune 1er Cru
格付け一級畑(複数畑ブレンド)
判別の根拠「1er Cru」があるが畑名なし
ラベル表記Volnay 1er Cru Les Caillerets
格付け一級畑(単一畑)
判別の根拠「1er Cru」+畑名
ラベル表記Chambolle-Musigny Les Amoureuses
格付け一級畑
判別の根拠1er Cruの表記が省略されることもあるが、レ・ザムルーズは一級畑
ラベル表記Corton-Charlemagne
格付け特級畑
判別の根拠畑名が単独でAOCになっている
ラベル表記Chambertin Clos de Bèze
格付け特級畑
判別の根拠畑名単独。村名「Gevrey」が付いていない
ラベル表記Gevrey-Chambertin
格付け村名
判別の根拠村名。畑名の「Chambertin」とハイフンでつながっている
迷ったときの3ステップ
① 「1er Cru」または「Premier Cru」の文字を探す → あれば一級畑
② 「Grand Cru」の文字を探す → あれば特級畑(省略されることもある)
③ 地名がハイフンでつながっているか → つながっていれば村名、畑名単独なら特級の可能性が高い
クリマとリューディ——ブルゴーニュワインの格付けの土台にある思想
ブルゴーニュの格付けをわかりやすく理解するには、その土台にあるクリマ(Climat)という概念を知る必要があります。
用語クリマ(Climat)
意味明確な境界を持ち、固有の名前と格付けを持つブドウ畑の区画。地質・日照・風・標高などの条件がその区画固有のもの。ブルゴーニュには1,247のクリマが存在するとされる
用語リューディ(Lieu-dit)
意味地籍上の小地名。クリマと重なることが多いが、格付けを伴わない単なる地名を指すこともある
用語テロワール
意味クリマを成立させている自然条件と人的要素の総体を指す、より広い概念
2015年、「ブルゴーニュのクリマ」はユネスコ世界遺産に登録されました。評価されたのは畑そのものではなく、1,000年以上にわたって土地の差を観察・記録し、境界線を引き続けてきた人間の営みです。
この観察の主体は、中世のシトー会・クリュニー会の修道士たちでした。彼らは何世代にもわたって、どの区画からどんな味のワインができるかを記録し続けた。ブルゴーニュの格付けは、19世紀に突然作られたものではなく、その膨大な観察の蓄積を法制度として固定したものです。
ブルゴーニュの格付けは優れた制度ですが、万能ではありません。実力と格付けがずれている例を知っておくことは、賢く買うために重要です。
例外ムルソーに特級がない
内容ペリエール、ジュヌヴリエールは実力として特級相当。19世紀の格付け時の政治的経緯によるとされる
例外ヴォルネイに特級がない
内容レ・カイユレ、クロ・デ・シェーヌは別格の評価
例外ニュイ・サン・ジョルジュに特級がない
内容レ・サン・ジョルジュは特級昇格が申請された経緯を持つ
例外クロ・ド・ヴージョの品質差
内容50haの特級畑を80人以上が分割所有。斜面上部と下部で条件が大きく違い、同じ特級名でも中身の差が非常に大きい
例外一級が特級を上回る価格
内容シャンボール・ミュジニーのレ・ザムルーズや、ヴォーヌ・ロマネのクロ・パラントゥーは、しばしば特級より高値で取引される
クロ・ド・ヴージョをどう考えるか
ブルゴーニュの格付けの限界を象徴する畑です。中世の修道院が一体として管理していた50haが、フランス革命後の分割で細分化されました。斜面上部(城の周辺)は排水が良く優秀、下部は水はけが悪い。同じ「Clos de Vougeot」でも、造り手と区画の場所で内容がまったく違います。
特級畑だから買う、ではなく造り手を見る——この畑がその重要性を教えてくれます。
▶ ヴージョのワインを見る
ブルゴーニュワインの格付けより重要な「造り手」という変数
ブルゴーニュの格付けをわかりやすく理解したあとに、最後に押さえるべき原則があります。
ブルゴーニュ購入の黄金則
優れた造り手の村名 > 平凡な造り手の一級畑
ブルゴーニュは、ボルドーのように大規模なシャトーが単独で畑を所有する構造ではありません。ひとつの畑を多数の生産者が分割所有しています。同じ畑・同じヴィンテージでも、造り手によって内容は劇的に変わります。
だからブルゴーニュを買うときは、「格付け」と「造り手」を掛け合わせて判断する必要があります。信頼できる造り手を数軒見つけ、その造り手の村名クラスから入る——これがもっとも確実で、経済的にも合理的な道筋です。
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予算・目的ブルゴーニュを初めて飲む
おすすめの階層地方名(Bourgogne Rouge/Blanc)
具体的な狙い方良い造り手の地方名から。ピノ・ノワールとシャルドネの基本形がわかる
予算・目的日常的に楽しみたい
おすすめの階層地方名〜村名(周縁の村)
具体的な狙い方マルサネ、サヴィニー・レ・ボーヌ、サントネイ、コート・シャロネーズ、マコネー
予算・目的村ごとの違いを知りたい
おすすめの階層村名
具体的な狙い方ジュヴレとシャンボール、ムルソーとピュリニーを飲み比べる
予算・目的一段深く入りたい
おすすめの階層一級畑
具体的な狙い方特級に隣接する一級畑を狙う。ヴォルネイ、ボーヌ、ニュイ・サン・ジョルジュの一級は内容に対して価格が理性的
予算・目的特別な一本を探している
おすすめの階層特級畑
具体的な狙い方ただし造り手を最優先で。同じ特級名でも内容差が大きい
Wine Libraryでは、ブルゴーニュを村名別・造り手別のコレクションで整理しています。格付けの階層と造り手を掛け合わせてお選びいただけるよう構成していますので、ご活用ください。
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