ボルドーワインの品種と割合|カベルネとメルローの比率で味が決まる

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ボルドーワインの品種と割合|カベルネとメルローの比率で味が決まる


ボルドーワイン品種カベルネ・ソーヴィニヨンメルロー割合

ボルドーワインの味わいは、品種の割合でほぼ決まります。カベルネ・ソーヴィニヨンが70%なのか、メルローが90%なのか——この比率が分かれば、飲む前に味の輪郭が予測できます。

意外に思われるかもしれませんが、ボルドー全体で最も栽培面積が大きい品種はメルローです。カベルネ・ソーヴィニヨンではありません。五大シャトーのイメージが強いため誤解されがちですが、実際にはメルローがボルドー全栽培面積の約6割を占めています。

この記事では、ボルドーワインの品種構成を栽培面積の実数、シャトー別の具体的な割合、そして割合が味わいにどう現れるかまで踏み込んで解説します。

ボルドーワインの品種と栽培割合

ボルドー全体(約11万ha)における品種の栽培割合は、おおむね次の通りです。

品種
色
栽培割合の目安
主な産地
品種メルロー
色黒
栽培割合の目安約60%
主な産地右岸全域、左岸の補助品種としても広く
品種カベルネ・ソーヴィニヨン
色黒
栽培割合の目安約20%
主な産地左岸(メドック、グラーヴ)
品種カベルネ・フラン
色黒
栽培割合の目安約6%
主な産地右岸、特にサン・テミリオン
品種セミヨン
色白
栽培割合の目安約6%
主な産地ソーテルヌ、グラーヴ、ボルドー・ブラン
品種ソーヴィニヨン・ブラン
色白
栽培割合の目安約5%
主な産地グラーヴ、ボルドー・ブラン、ソーテルヌ
品種プティ・ヴェルド
色黒
栽培割合の目安約1%
主な産地左岸の補助品種
品種ミュスカデル/マルベック/カルムネール
色白・黒
栽培割合の目安各1%未満
主な産地ごく少量
「ボルドー=カベルネ」は誤解
栽培面積で見れば、ボルドーは圧倒的にメルローの産地です。カベルネ・ソーヴィニヨンの3倍の面積があります。

カベルネのイメージが強いのは、五大シャトーを含む高名なシャトーが左岸に集中し、そこではカベルネが主体だから。有名銘柄の品種構成と、ボルドー全体の品種構成は、まったく別の話です。

カベルネ・ソーヴィニヨン|ボルドーワインの骨格をつくる品種

左岸ボルドーの主役です。カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交雑から生まれた品種であることが、DNA解析で判明しています。

項目
内容
項目果皮
内容厚く、色素とタンニンが非常に豊富。長期熟成の骨格を作る
項目種
内容大きく、タンニンが多い。果肉に対する種の比率が高い
項目成熟
内容晩熟(10月中旬)。温かい土壌がないと熟しきらない
項目適する土壌
内容砂利(グラーヴ)。蓄熱と排水が成熟を助ける
項目香り
内容カシス、ブラックカラント、杉、鉛筆の芯、黒鉛、煙草、ミント、ユーカリ
項目味わい
内容高い酸、強固なタンニン、直線的な骨格。若いうちは硬く閉じている
項目熟成
内容15〜30年以上。タンニンが溶けて初めて本領を発揮する

カベルネ・ソーヴィニヨンの最大の特徴は「若いうちは美味しくない」こと。これは欠点ではなく、長期熟成型の設計です。タンニンの量が多く粒子が細かいため、溶けるのに時間がかかります。その代わり、20年後に他の品種では到達できない複雑さに達します。

▶ カベルネ・ソーヴィニヨンのワインを見る

メルロー|ボルドー最大の栽培面積を持つ品種

右岸の主役であり、ボルドー全体で最大の栽培面積を持つ品種です。左岸でもブレンドの相手として不可欠です。

項目
内容
項目果皮
内容カベルネより薄い。色は濃いが、タンニンは穏やか
項目果粒
内容大きく、果汁が多い。糖度が上がりやすくアルコールが高くなる傾向
項目成熟
内容早熟(9月下旬)。カベルネより2〜3週間早い
項目適する土壌
内容粘土。保水性と低い地温が、急激な成熟を抑えて酸を保たせる
項目香り
内容プラム、ブラックチェリー、イチジク、チョコレート、トリュフ、なめし革
項目味わい
内容豊かな果実味、ビロードのようなタンニン、丸い口当たり
項目熟成
内容10〜25年。カベルネより早く開くが、偉大な右岸は数十年持つ
メルローは「早飲み品種」ではない
「メルロー=柔らかくて早く飲める」という理解は、安価なメルローにだけ当てはまります。

ペトリュスはメルロー100%に近い構成で、飲み頃まで20年以上を要し、50年以上熟成する。粘土土壌の低収量メルローは、カベルネに劣らない凝縮と熟成能力を持ちます。品種そのものではなく、土壌と収量が寿命を決めるのです。

▶ メルローのワインを見る

カベルネ・フラン|香りと酸を担う第3の品種

カベルネ・ソーヴィニヨンの親にあたる品種で、ボルドーではブレンドの香りと骨格を担当します。右岸、特にサン・テミリオンでは主役級の比率で使われます。

項目
内容
項目果皮
内容薄め。色素はカベルネ・ソーヴィニヨンより少ない
項目成熟
内容中間(10月上旬)。カベルネ・ソーヴィニヨンより1週間ほど早い
項目適する土壌
内容石灰岩。サン・テミリオンの丘(コート)で真価を発揮する
項目香り
内容ラズベリー、スミレ、鉛筆、ピーマン(未熟な場合)、タバコの葉、黒鉛
項目ブレンドでの役割
内容香りの華やかさ、酸の輪郭、中盤の伸び。「ワインに背骨を通す」役割
項目代表例
内容シュヴァル・ブランは約半分がカベルネ・フラン。ラフルールも高比率

カベルネ・フランは熟しきらないと青いピーマンのような香りが出るため、気候と土壌を選びます。逆に完熟すると、ボルドーのブレンドに他の品種では出せない香りの立体感と冷涼な緊張感を与えます。

温暖化が進む現在、カベルネ・フランの比率を上げる生産者が増えています。カベルネ・ソーヴィニヨンより早く熟し、アルコールが上がりすぎないためです。

▶ カベルネ・フランのワインを見る

プティ・ヴェルドとその他のボルドーワイン黒ブドウ

品種
役割
使用割合の目安
品種プティ・ヴェルド
役割極めて晩熟。色素とタンニン、黒胡椒やスミレのスパイシーな香りを加える。熟す年にだけ使われる
使用割合の目安0〜10%
品種マルベック(コット)
役割かつては主要品種だったが、1956年の大霜害で激減。現在はごく少量。アルゼンチンで再興
使用割合の目安0〜5%
品種カルムネール
役割19世紀のボルドーの主要品種。フィロキセラ後ほぼ消滅し、チリで再発見された
使用割合の目安1%未満
品種新認可品種(2021年〜)
役割温暖化対策としてトゥーリガ・ナショナル、マルスラン、アリナルノア、カスティーリョなどが補助的に認可された
使用割合の目安実験段階
2021年の品種認可という転換点
ボルドーは2021年、温暖化への適応として新たな品種をAOCに認可しました。使用は全体の5%以内、ブレンド比率10%以内という制限つきですが、数百年変わらなかったボルドーの品種構成が動き始めた象徴的な出来事です。

背景にあるのは、収穫時期の前倒しとアルコール度数の上昇。かつて12.5%だったボルドーが、いまは14%を超えることも珍しくありません。

ボルドーの白ブドウ品種

ボルドーワインの品種というと赤が注目されますが、白も重要です。

品種
特徴
主な用途
品種セミヨン
特徴果皮が薄く貴腐菌がつきやすい。蜜、蜜蝋、ナッツ。酸は穏やかで厚みがある
主な用途ソーテルヌの主体(80%前後)。辛口白のベース
品種ソーヴィニヨン・ブラン
特徴高い酸、グレープフルーツ、青草、パッションフルーツ
主な用途辛口白の主体。ソーテルヌにも酸を補うため20%前後
品種ミュスカデル
特徴華やかなマスカット様の香り。単独では使われず少量
主な用途辛口・甘口ともに香りづけとして数%
白ワインのタイプ
品種の割合
特徴
白ワインのタイプボルドー・ブラン(辛口・軽め)
品種の割合ソーヴィニヨン・ブラン主体
特徴爽やかでフレッシュ。早飲み
白ワインのタイプペサック・レオニャン(辛口・樽熟)
品種の割合セミヨン40〜60%+ソーヴィニヨン・ブラン
特徴樽熟成で厚みと複雑さ。10年以上の熟成能力を持つ
白ワインのタイプソーテルヌ/バルサック(貴腐甘口)
品種の割合セミヨン80%前後+ソーヴィニヨン・ブラン+ミュスカデル
特徴貴腐菌による凝縮。数十年熟成する

ボルドーワインシャトー別・品種の割合の実例

実際のシャトーがどんな品種構成なのかを見ると、割合と味わいの関係が具体的に理解できます。以下はおおよその代表的な構成で、年によって変動します。

左岸|カベルネ・ソーヴィニヨン主体

シャトー
産地
カベルネ・ソーヴィニヨン
メルロー
その他
シャトーラトゥール
産地ポイヤック
カベルネ・ソーヴィニヨン約90%
メルロー約9%
その他プティ・ヴェルド他 約1%
シャトームートン・ロートシルト
産地ポイヤック
カベルネ・ソーヴィニヨン約80%
メルロー約16%
その他カベルネ・フラン他 約4%
シャトーラフィット・ロートシルト
産地ポイヤック
カベルネ・ソーヴィニヨン約85%
メルロー約13%
その他カベルネ・フラン他 約2%
シャトーシャトー・マルゴー
産地マルゴー
カベルネ・ソーヴィニヨン約85%
メルロー約10%
その他プティ・ヴェルド、カベルネ・フラン 約5%
シャトーオー・ブリオン
産地ペサック・レオニャン
カベルネ・ソーヴィニヨン約45%
メルロー約40%
その他カベルネ・フラン 約15%
シャトーコス・デストゥルネル
産地サン・テステフ
カベルネ・ソーヴィニヨン約70%
メルロー約28%
その他カベルネ・フラン他 約2%

ポイヤックの3つの一級シャトーがいずれもカベルネ80〜90%という数字は象徴的です。砂利の丘の最上部という立地が、晩熟のカベルネを完熟させられることの証明でもあります。

一方オー・ブリオンはグラーヴに位置し、カベルネとメルローがほぼ半々。同じ左岸でも、土壌の違いが品種構成の違いとして表れています。

右岸|メルロー主体

シャトー
産地
メルロー
カベルネ・フラン
カベルネ・ソーヴィニヨン
シャトーペトリュス
産地ポムロール
メルローほぼ100%
カベルネ・フラン—
カベルネ・ソーヴィニヨン—
シャトール・パン
産地ポムロール
メルローほぼ100%
カベルネ・フラン—
カベルネ・ソーヴィニヨン—
シャトーラフルール
産地ポムロール
メルロー約50%
カベルネ・フラン約50%
カベルネ・ソーヴィニヨン—
シャトーシュヴァル・ブラン
産地サン・テミリオン
メルロー約40%
カベルネ・フラン約50%
カベルネ・ソーヴィニヨン約10%(年により変動)
シャトーオーゾンヌ
産地サン・テミリオン
メルロー約50%
カベルネ・フラン約50%
カベルネ・ソーヴィニヨン—
シャトーアンジェリュス
産地サン・テミリオン
メルロー約55%
カベルネ・フラン約45%
カベルネ・ソーヴィニヨン—
シュヴァル・ブランという例外
サン・テミリオンの頂点シュヴァル・ブランは、カベルネ・フランがメルローを上回るという、ボルドーでも極めて珍しい構成です。

その結果、右岸でありながら左岸的な香りの立体感と骨格を持ち、「左岸と右岸の中間」「どちらでもない唯一無二」と評されます。品種の割合が個性を作ることの、最も明快な実例です。

割合がボルドーワインの味わいにどう現れるか

品種の割合から味わいを予測する早見表です。ラベルやシャトーのウェブサイトで構成が分かれば、この表で当たりをつけられます。

カベルネ・ソーヴィニヨンの割合
味わいの傾向
飲み頃
カベルネ・ソーヴィニヨンの割合80〜100%
味わいの傾向極めて強固なタンニン、高い酸、カシスと鉛筆の芯。若いうちは硬く閉じる
飲み頃20〜30年以上
カベルネ・ソーヴィニヨンの割合60〜80%
味わいの傾向骨格を保ちつつメルローが中盤を埋める。バランス型
飲み頃15〜25年
カベルネ・ソーヴィニヨンの割合40〜60%
味わいの傾向カベルネの輪郭とメルローの丸みが拮抗。早くから親しみやすい
飲み頃10〜20年
カベルネ・ソーヴィニヨンの割合20〜40%
味わいの傾向果実味が前に出る。タンニンは穏やか
飲み頃8〜15年
カベルネ・ソーヴィニヨンの割合0〜20%(メルロー主体)
味わいの傾向プラムとチョコレート、ビロードのタンニン。柔らかく豊か
飲み頃5〜25年(土壌と収量による)
要素
カベルネが増えると
メルローが増えると
要素タンニン
カベルネが増えると量が増え、硬くなる
メルローが増えると量が減り、滑らかになる
要素酸
カベルネが増えると高くなる
メルローが増えると穏やかになる
要素色
カベルネが増えるとやや紫がかった深い色
メルローが増えると黒みがかった濃い色
要素香り
カベルネが増えるとカシス、杉、鉛筆、ミント
メルローが増えるとプラム、チョコレート、トリュフ
要素飲み頃
カベルネが増えると遅くなる
メルローが増えると早くなる
要素熟成の頂点
カベルネが増えると高く、長く続く
メルローが増えると早く訪れる(例外あり)

なぜボルドーワインはブレンドするのか

ブルゴーニュが単一品種なのに対し、ボルドーがブレンドする理由は明確です。

理由
内容
理由① 天候リスクの分散
内容メルローは9月下旬、カベルネは10月中旬に収穫。どちらかが天候に打撃を受けても、もう一方が救う。海洋性気候で天候変動の大きいボルドーでは、生き残りの戦略だった
理由② 味わいの設計
内容カベルネの骨格、メルローの果実と丸み、カベルネ・フランの香りと酸、プティ・ヴェルドの色とスパイス。それぞれの長所を組み合わせる
理由③ 年ごとの最適化
内容同じシャトーでも、割合は毎年変わる。カベルネが完熟した年は比率を上げ、苦戦した年は下げる。「その年の最良のワイン」を造るための調整弁
理由④ 区画ごとの個性の統合
内容1シャトーが複数の区画を持ち、区画ごとに土壌が違う。区画別に醸造し、最後にブレンドで一本にまとめる
ブレンドは「混ぜる」ではなく「組み立てる」
フランス語でブレンドをアッサンブラージュ(assemblage=組み立て)と呼びます。区画別・品種別に醸造した数十のロットを試飲し、グラン・ヴァンに入れるものと、セカンドラベルに回すものを選別する。この選別と組み立てが、ボルドーの醸造責任者の最大の仕事です。

グレートヴィンテージほどグラン・ヴァンに入る比率が上がり、難しい年は容赦なく落とす。1993年のムートンのように、難しい年でも名門が高水準を保てるのはこの選別があるからです。

品種の割合から選ぶボルドーワイン

好み・目的
選ぶべき品種構成
具体的な産地
好み・目的ボルドーが初めて
選ぶべき品種構成メルロー主体(70%以上)
具体的な産地サン・テミリオン、ラランド・ド・ポムロール、ボルドー・シュペリユール
好み・目的力強い赤が好き
選ぶべき品種構成カベルネ主体(70%以上)
具体的な産地ポイヤック、サン・テステフ
好み・目的バランス型を探している
選ぶべき品種構成カベルネ50〜65%
具体的な産地サン・ジュリアン、マルゴー、オー・メドック
好み・目的香りの複雑さを求める
選ぶべき品種構成カベルネ・フラン高比率
具体的な産地サン・テミリオンの石灰岩の丘(コート)の銘柄
好み・目的柔らかく豊かな味わい
選ぶべき品種構成メルロー90%以上
具体的な産地ポムロール
好み・目的長期熟成させたい
選ぶべき品種構成カベルネ80%以上の当たり年
具体的な産地ポイヤックの2016、2019、2022年
好み・目的白ワインを試したい
選ぶべき品種構成セミヨン+ソーヴィニヨン・ブラン
具体的な産地ペサック・レオニャンの辛口白、ソーテルヌの甘口

Wine Libraryでは、ボルドーの主要品種を品種別コレクションでご覧いただけます。同じ品種がボルドーと他産地でどう変わるかを比べると、品種と土地の関係が立体的に理解できます。

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