ボルドーワインの格付けをわかりやすく解説|5つの制度と読み解き方

ボルドーワインの格付けをわかりやすく解説|5つの制度と読み解き方-Wine Library-

ボルドーワインの格付けをわかりやすく解説|5つの制度と読み解き方


ボルドーワイン格付けわかりやすく1855年五大シャトー

ボルドーワインの格付けがわかりやすく理解できない最大の理由は、制度が1つではなく5つあるからです。しかも互いに無関係で、作られた年も基準も更新の頻度もバラバラ。「ボルドーの格付け」という単一のものは存在しません。

結論を先に言います。ボルドーの格付けを理解する鍵は、「どの地区の、どの制度の話か」を最初に確定させること。そして1855年格付けは170年前の価格表であり、現在の実力とは別物だと知ることです。

この記事では、5つの制度を1つずつ整理し、ラベルの表記からどの格付けかを見分ける方法、そして格付けと実力のずれをどう利用するかまで解説します。

ボルドーワインの格付けは5つある|全体像

制度
対象地区
制定
階級
更新
制度1855年メドック格付け
対象地区メドック(+オー・ブリオン)
制定1855年
階級1級〜5級の5階級・61シャトー
更新原則なし(1973年の1回のみ)
制度1855年ソーテルヌ格付け
対象地区ソーテルヌ、バルサック
制定1855年
階級特別1級/1級/2級・27シャトー
更新なし
制度グラーヴ格付け
対象地区ペサック・レオニャン
制定1953年(1959年改訂)
階級階級なし(赤/白で認定)・16シャトー
更新なし
制度サン・テミリオン格付け
対象地区サン・テミリオン
制定1955年
階級プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA/B、グラン・クリュ・クラッセ
更新約10年ごと
制度クリュ・ブルジョワ
対象地区メドック
制定1932年(2020年再編)
階級エクセプショネル/スーペリュール/クリュ・ブルジョワ
更新5年ごと
そしてポムロールには格付けがない
ボルドー最高値のワインを産むポムロール(ペトリュス、ル・パン、ラフルール)には、公的な格付け制度が一切存在しません。それでも市場が最高評価を与えている——格付けが価値の絶対的な指標ではないことの、最も明快な証拠です。

① 1855年メドックボルドーワイン格付け|五大シャトーの起源

「ボルドーの格付け」と言えば通常これを指します。ナポレオン3世の命により、1855年のパリ万国博覧会に向けて作られました。

何を基準に作られたのか

ここが重要です。格付けを作ったのはワインの専門家ではなく、ボルドーの商工会議所と仲買人組合でした。そして基準は試飲ではなく、過去数十年の取引価格の実績です。

つまり1855年格付けは、品質評価というより、当時の市場価格のランキング表。ワインを飲んで決めたものではありません。

5つの階級と代表シャトー

階級
シャトー数
代表シャトー
価格帯の目安
階級第1級(プルミエ・クリュ)
シャトー数5
代表シャトーラフィット・ロートシルト、ラトゥール、シャトー・マルゴー、ムートン・ロートシルト、オー・ブリオン
価格帯の目安10万円〜
階級第2級
シャトー数14
代表シャトーコス・デストゥルネル、レオヴィル・ラス・カーズ、デュクリュ・ボーカイユ、ピション・ラランド
価格帯の目安3万円〜10万円
階級第3級
シャトー数14
代表シャトーパルメ、カロン・セギュール、ラグランジュ
価格帯の目安2万円〜
階級第4級
シャトー数10
代表シャトープリューレ・リシーヌ、ベイシュヴェル、タルボー
価格帯の目安1.5万円〜
階級第5級
シャトー数18
代表シャトーポンテ・カネ、ランシュ・バージュ、ダルマイヤック、グラン・ピュイ・ラコスト
価格帯の目安1万円〜

なぜオー・ブリオンだけメドック外なのか

オー・ブリオンはメドックではなくグラーヴ(現ペサック・レオニャン)にあります。それでも1855年格付けに含まれたのは、当時すでにメドックの一級と同等以上の価格で取引されていたため。実力を無視できなかったのです。

1973年のムートン昇格

1855年以来、格付けが変更されたのはただ一度。1973年、シャトー・ムートン・ロートシルトが第2級から第1級へ昇格しました。

「我一番たり得ず、されど二番には非ず」
ムートンは1855年に2級とされましたが、オーナーのフィリップ・ド・ロートシルト男爵は半世紀にわたって昇格運動を続けました。

昇格前のラベルには 「Premier ne puis, second ne daigne, Mouton suis(一番にはなれない、二番には甘んじない、我はムートンである)」。
1973年の昇格後は 「Premier je suis, second je fus, Mouton ne change(我は一番である、かつて二番だった、ムートンは変わらない)」 に書き換えられました。

格付けがいかに重い意味を持つかを示す、ボルドー史上もっとも有名なエピソードです。

▶ ポイヤックのワインを見る▶ マルゴーのワインを見る▶ サン・ジュリアンのワインを見る

② 1855年ソーテルヌ・バルサック格付け

メドック格付けと同時に、甘口ワインの産地ソーテルヌとバルサックにも格付けが作られました。こちらは3階級です。

階級
シャトー数
代表シャトー
階級特別第1級(プルミエ・クリュ・シュペリユール)
シャトー数1
代表シャトーシャトー・ディケム
階級第1級
シャトー数11
代表シャトークリマンス、スデュイロー、リューセック、ギロー
階級第2級
シャトー数15
代表シャトードワジー・デーヌ、ネラック他

注目すべきはシャトー・ディケムだけが「特別第1級」という単独の階級に置かれていること。メドックには5つの一級がありますが、ソーテルヌの頂点は1つだけ。それだけディケムが別格と見なされていたということです。

③ グラーヴ(ペサック・レオニャン)格付け

1953年に制定され、1959年に改訂された制度です。他と大きく違うのは、階級がないこと。

特徴
内容
特徴階級
内容なし。「クリュ・クラッセ(格付けシャトー)」か否かの二択のみ
特徴対象
内容16シャトー。赤のみ認定、白のみ認定、赤白両方認定の3パターン
特徴赤白両方の認定
内容オー・ブリオン、ラ・ミッション・オー・ブリオン、パプ・クレマン、カルボニュー、ブスコー、ラトゥール・マルティヤックなど
特徴特記
内容オー・ブリオンは1855年メドック格付けの第1級でもある。2つの格付けに名を連ねる唯一のシャトー

グラーヴは白ワインも格付けの対象である点が独特です。セミヨンとソーヴィニヨン・ブランから造られる樽熟成の辛口白は、ボルドー白の最高峰として評価されています。

▶ グラーヴのワインを見る

④ サン・テミリオン格付け|ボルドーワイン唯一更新される制度

1955年制定。ボルドーの格付けの中で唯一、定期的に見直される制度です。そしてそれゆえに、最も議論の多い制度でもあります。

階級の構造

階級
内容
代表シャトー
階級プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ A
内容最上位。かつてシュヴァル・ブランとオーゾンヌの2つのみだったが、2012年にパヴィとアンジェリュスが昇格し4つに
代表シャトー—
階級プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ B
内容第2階層
代表シャトーボーセジュール、カノン、フィジャック、トロロン・モンドほか
階級グラン・クリュ・クラッセ
内容第3階層。数十シャトー
代表シャトー—
階級サン・テミリオン・グラン・クリュ
内容格付けではなくAOC名。誰でも名乗れる条件つきの呼称
代表シャトー—
注意|「グラン・クリュ」の表記に騙されない
サン・テミリオンで最も紛らわしいのがここです。

「Saint-Émilion Grand Cru」は格付けではなくAOC名。一定の条件(収量制限、熟成期間など)を満たせば、どのシャトーでも名乗れます。数百のシャトーがこれを名乗っています。

格付けシャトーは 「Grand Cru Classé」 または 「Premier Grand Cru Classé」 と、Classé(クラッセ=格付けされた)の語が入ります。この一語の有無が、格付けシャトーかどうかの分かれ目です。

ボルドーワイン格付けの見直し制度の光と影

側面
内容
側面長所
内容約10年ごとに試飲審査と畑の調査を行うため、現在の実力を反映しやすい。努力が報われる制度
側面短所
内容格下げされたシャトーによる訴訟が繰り返され、2006年の格付けは一度無効とされた
側面近年の動き
内容2022年の見直しでは、シュヴァル・ブラン、オーゾンヌ、アンジェリュスが審査への参加を辞退。制度の権威が揺らいでいる
側面評価基準
内容試飲の比重だけでなく、知名度・観光受け入れ・SNS発信なども評価対象に含まれ、批判の対象になっている

▶ サン・テミリオンのワインを見る

⑤ ポムロール|格付けが存在しない産地

ポムロールには公的な格付けが一切ありません。制定されたことも、議論されたこともほぼありません。

理由
内容
理由産地が小さい
内容約800ha。メドックの8分の1以下。格付けを作る規模の必要性がなかった
理由小規模家族経営
内容1シャトーあたり平均5〜10ha。組織的な格付け運動が起きにくい
理由歴史が新しい
内容国際的に評価されたのは20世紀後半から。1855年の時点では無名だった
理由市場が評価を決めている
内容ペトリュス、ル・パン、ラフルールは格付けなしで世界最高値。格付けが不要という証明でもある

ポムロールを選ぶときは、格付けという手がかりがない。頼りになるのは生産者名と評論家の評価、そして畑の位置です。粘土と鉄分を含む高台(プラトー)にある畑ほど評価が高い、という地質的な序列が事実上の格付けとして機能しています。

▶ ポムロールのワインを見る

クリュ・ブルジョワというボルドーワイン第6の枠組み

1855年格付けに入らなかったメドックのシャトーを対象とする制度です。2020年に大幅に再編され、現在は3階層になっています。

階層
位置づけ
階層クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル
位置づけ最上位。格付けシャトーに匹敵する実力を持つ
階層クリュ・ブルジョワ・スーペリュール
位置づけ中間層
階層クリュ・ブルジョワ
位置づけ基礎層。数百シャトー

5年ごとに見直されるため、実力を反映しやすい制度です。価格対品質比で見ると、ボルドーで最も合理的な選択肢が集まっている層でもあります。

格付けに入らない実力派シャトー
シャトー・ソシアンド・マレはあえてクリュ・ブルジョワの申請もしていないことで知られます。「格付けに依存せず、品質で評価されればいい」という姿勢で、実際に格付けシャトーに匹敵する評価を得ています。

同様の例にシャス・スプリーン、グロリアなどがあり、ボルドーの格付けは「入っていないから劣る」を意味しないことを示しています。

ラベルからボルドーワイン格付けを見分ける

ラベルの表記
意味
どの制度
ラベルの表記Premier Grand Cru Classé
意味第1級
どの制度1855年メドック格付け/サン・テミリオン
ラベルの表記Grand Cru Classé en 1855
意味1855年格付けシャトー(階級は別表記)
どの制度1855年メドック格付け
ラベルの表記Deuxième / Troisième / Quatrième / Cinquième Cru
意味2級/3級/4級/5級
どの制度1855年メドック格付け
ラベルの表記Grand Cru Classé de Graves
意味グラーヴ格付けシャトー
どの制度グラーヴ格付け
ラベルの表記Premier Grand Cru Classé A / B
意味サン・テミリオン最上位/第2階層
どの制度サン・テミリオン格付け
ラベルの表記Grand Cru Classé(サン・テミリオンの場合)
意味サン・テミリオン格付けシャトー
どの制度サン・テミリオン格付け
ラベルの表記Saint-Émilion Grand Cru
意味格付けではなくAOC名。Classéがないことに注意
どの制度—
ラベルの表記Cru Bourgeois / Supérieur / Exceptionnel
意味クリュ・ブルジョワの各階層
どの制度クリュ・ブルジョワ
ラベルの表記表記なし(ポムロール)
意味格付け制度が存在しない
どの制度—
判別の最短ルート
① まずアペラシオン(産地名)を見る → ポイヤック等ならメドック格付け、サン・テミリオンならサン・テミリオン格付け、ポムロールなら格付けなし
② 「Classé」の語を探す → あれば格付けシャトー、なければAOC名か非格付け
③ 階級の語(Premier, Deuxième…)を探す → 1855年格付けの階級

ボルドーワイン格付けと実力のずれをどう利用するか

1855年格付けは170年前の価格表です。当然、現在の実力とは差が生じています。このずれこそが、賢く買うための余地です。

パターン
内容
買い手にとっての意味
パターンスーパーセカンド
内容第2級でありながら第1級に迫る実力と評価を持つシャトー群(レオヴィル・ラス・カーズ、コス・デストゥルネル、ピション・ラランド、デュクリュ・ボーカイユなど)
買い手にとっての意味第1級の半額以下で、近い体験ができる
パターン過小評価された5級
内容第5級だが現在の評価は2〜3級相当(ポンテ・カネ、ランシュ・バージュ、グラン・ピュイ・ラコストなど)
買い手にとっての意味ボルドーで最も価格対品質比が高い層
パターン所有者交代による向上
内容1855年以降にオーナーが変わり、投資によって品質が大きく向上したシャトー
買い手にとっての意味格付けの階級と価格が実力に追いついていない
パターン畑の売買
内容170年の間に畑が売買・分割されたシャトーもある。格付け当時と同じ畑ではない
買い手にとっての意味格付けを絶対視する理由がさらに薄れる
パターン格付け外の実力派
内容ソシアンド・マレ、シャス・スプリーン、グロリアなど
買い手にとっての意味格付けシャトーに匹敵する品質を1万円台で

実用的な結論はこうです。格付けは「そのシャトーの価格の目安」として使い、品質は評論家の評価と造り手の現在の評判で判断する。格付けを品質の絶対指標として使うのが、最もよくある失敗です。

ボルドーワインセカンドラベルという選択肢

格付け上位シャトーは、グラン・ヴァン(正規品)に入れなかったロットをセカンドラベルとして別名で販売します。

シャトー
セカンドラベル
特徴
シャトーラフィット・ロートシルト
セカンドラベルカリュアド・ド・ラフィット
特徴—
シャトーラトゥール
セカンドラベルレ・フォール・ド・ラトゥール
特徴セカンドの中でも別格の評価
シャトーシャトー・マルゴー
セカンドラベルパヴィヨン・ルージュ
特徴—
シャトームートン・ロートシルト
セカンドラベルル・プティ・ムートン
特徴—
シャトーコス・デストゥルネル
セカンドラベルレ・パゴド・ド・コス
特徴—
シャトーレオヴィル・ラス・カーズ
セカンドラベルル・プティ・リオン
特徴—
セカンドラベルの特徴
内容
セカンドラベルの特徴価格
内容グラン・ヴァンの1/3〜1/5程度
セカンドラベルの特徴品質
内容同じ畑・同じチーム・同じ醸造。若木の区画や、選別で落ちたロットを使用
セカンドラベルの特徴味わい
内容グラン・ヴァンの輪郭を保ちつつ、より早く開く。凝縮感と余韻は劣る
セカンドラベルの特徴飲み頃
内容グラン・ヴァンより5〜10年早い
セカンドラベルの特徴狙いどころ
内容当たり年のセカンドは、難しい年のグラン・ヴァンより良いことがある
当たり年のセカンド vs 難しい年のグラン・ヴァン
同じ予算なら、グレートヴィンテージのセカンドラベルを選ぶのが一般に合理的です。当たり年はセカンドに回るロットの質も高く、選別が厳しい分むしろ中身が良い年もあります。

一方、難しい年でもグラン・ヴァンを選ぶ価値があるのは、「そのシャトーのその年を飲む」という体験に意味がある場合です。

格付けを踏まえたボルドーワインの選び方

予算
おすすめの層
具体例
予算〜1万円
おすすめの層クリュ・ブルジョワ、格付け外の実力派、右岸の周縁アペラシオン
具体例ソシアンド・マレ、シャス・スプリーン、ラランド・ド・ポムロール、フロンサック
予算1〜2万円
おすすめの層第4〜5級、当たり年のセカンドラベル
具体例プリューレ・リシーヌ、タルボー、グラン・ピュイ・ラコスト
予算2〜5万円
おすすめの層第2〜3級、スーパーセカンド、右岸の名門
具体例コス・デストゥルネル、デュクリュ・ボーカイユ、ラ・コンセイヤント
予算5〜10万円
おすすめの層スーパーセカンドの当たり年、一級のセカンド
具体例レオヴィル・ラス・カーズ、レ・フォール・ド・ラトゥール
予算10万円〜
おすすめの層五大シャトー、右岸の頂点
具体例ラフィット、ラトゥール、マルゴー、ムートン、オー・ブリオン、ペトリュス

Wine Libraryでは、五大シャトーから格付け外の実力派まで、幅広くボルドーを取り揃えています。格付けの階級だけでなく、ヴィンテージと造り手の現在の実力を踏まえてお選びいただけるよう構成しています。

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